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「菅・岸田・石破氏」誰の経済政策に期待感があるか

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
左から岸田文雄氏、菅義偉氏、石破茂氏
左から岸田文雄氏、菅義偉氏、石破茂氏

 安倍晋三首相が辞任する意向を8月28日に明らかにした。この報道が午後2時過ぎにマーケットに伝わると、日経平均株価は600円超も下げ、為替レートは円高に振れた。安倍政権の経済運営は、株高・円安を支えてきたことがわかる。

 では、次の首相はどのような経済政策を行うだろうか。現在、首相候補としてメディアによく名前が挙がるのは、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長だ。これまでの発言などから政策を予想してみたい。

 ただ、3人の誰が次の首相になっても、現時点では具体的な政権構想を描くことができないから、マーケットの反応も読みにくい。本稿では少し想像力を働かせて、それぞれの候補が将来の日本経済の成長にどれくらいの期待感を持てるのかを考える。

菅氏「アベノミクスの継承者」

 菅氏が首相になる場合が一番予想は立てやすい。長く安倍政権を支え、アベノミクスを推進してきた。

 安倍首相は政策を失敗して辞めるわけではないので、その路線を継承すると宣言するメリットはまだ大きい。ただ、率直に言って、安倍首相の政策メニューは最近はほとんど“ネタ切れ”に陥っていたから、その継承というだけでは大きな期待感はつくれない。

 世論調査の「首相にふさわしい人」では、菅氏は上位ではない。仮に首相になっても内閣支持率は高くないだろう。菅氏が首相になった場合は、安倍首相とは違う独自の政策アイデアを出さなければ、高くは評価されないだろう。

 もうひとつの焦点は、目下の新型コロナウイルス対策を成功させることができるかどうかだ。菅氏は、感染リスクよりも経済活動を重視する発言を繰り返しており、この点は筆者も評価している。

 楽観…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。