ニッポン金融ウラの裏

「リモート営業で新規顧客開拓できず」証券業界の苦境

浪川攻・金融ジャーナリスト
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 新型コロナ禍のなか、証券業界では「個人客への営業活動で苦戦している」との声が広がっている。顧客を個別に訪問し商品説明を行い勧誘する「対面型」と呼ばれる営業手法に制約が増し、顧客の新規開拓をしにくい状況になっているからだ。ネット専業証券各社が新規口座数を拡大させているのと好対照となりつつある。

 新型コロナウイルス問題が深刻化してから、多くの証券会社が営業社員の在宅勤務化を進めた。営業社員は顧客に対し、電話やパソコンを通じた「リモート営業」を強化した。ITインフラが十分に整備できておらず、急ピッチでシステムを整えた証券会社もある。現時点でも「リモート営業」の態勢が基本的に続いている。

 そうしたなかで、次第に浮き彫りになってきたのが「リモート営業では、どんなにうまくやっても『現状維持』が精いっぱい」(大手証券幹部)という実情だ。電話やパソコンで顧客とつながる営業手法は、既存の顧客をつなぎ留めることには有効だが、「新規開拓は極めて難しい」という。

 証券各社は近年、一般の個人客への営業に力を入れてもコスト倒れになりかねないとして、「富裕層」の顧客の掘り起こしに力を注いできた。ところが、わが国の場合、富裕層は団塊の世代などの退職年齢世代がほとんどを占める。そうした富裕層は、新型コロナ禍のもとで、感染リスク防止の観点から、対面方式の営業を敬遠しがちだ。

 一方で、その世代の多くは相続問題に悩まされている。そうした顧客に対しては営業社員が訪問を繰り返し、意向を確認しながらより良い提案を行うことが有効だが、コロナ禍でそうした取り組みが困難になってしまった。相続問題のような込み入った話を電話やパソ…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。