高齢化時代の相続税対策

85歳父が相続対策中に急逝「宙に浮いた土地」の行方

広田龍介・税理士
  • 文字
  • 印刷
 
 

 東京都区内在住のMさん(85)は自宅近くに所有している駐車場を売却し、その売却資金でマンション2戸を購入して、2人の子供に相続する計画を立てた。だが、駐車場の売買契約を締結した後、買い主に物件の引き渡しをする前に、体調を崩して亡くなってしまった。

 駐車場の売却金額は1億2000万円で、売買契約時に買い主から手付金として2000万円を預かっている。2カ月後の物件引き渡しと同時に、所有権移転登記と残金の支払いを行う予定だった。

 相続人は、妻と長男、長女の家族3人だが、Mさんの急逝にぼうぜんとし、何をどうしたらいいのかもわからなかった。

 仲介した不動産業者は「土地の名義人はMさんなので、このままでは引き渡しをすることができない。引き渡しまでに、誰が相続するか決めて相続登記をしてほしい」という。万一、引き渡しが遅れれば、違約金を支払わなければならない可能性がある、とせかしてくる。

 不動産の売却や相続手続きも、Mさんの家族にとっては初めてのことばかりだ。そこで、知り合いの税理士に相談し、譲渡税や相続税について整理してもらった。

 まず、駐車場の売却については譲渡所得の申告をしなければならない。税務上、資産を売却した時期については、売買契約を締結した日とする「契約日基準」と、実際に資産を引き渡した日とする「引き渡し基準」の2通りの方法がある。どちらを選ぶかによって、相続開始後10カ月以内に申告する相続税にも影響が出てくる。

 契約日基準を選ぶ場合は、Mさんが売買契約の当事者となり、Mさんの準確定申告で譲渡所得の申告をすることになる。準確定申告はとは、亡くなった人の生前における所得についての確…

この記事は有料記事です。

残り837文字(全文1537文字)

広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。