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なぜ売れる? 「育ちがいい人」を読んでわいた疑問

山田道子・元サンデー毎日編集長
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今年2月の発売以降、「『育ちがいい人』だけが知っていること」は書店で人気だ=東京都内で2020年9月2日撮影
今年2月の発売以降、「『育ちがいい人』だけが知っていること」は書店で人気だ=東京都内で2020年9月2日撮影

 「どうせオイラは育ちが悪いよ、ケッ」と、ライターの永江朗さんは、この本を初めて本屋で見かけた時、マジむかついたそうだ。私も本屋でピンクの表紙を目にした時、「なんで育ちがよくないといけないの」と超疑問に思った。

 今年のベストセラーランキングの上位に位置する「『育ちがいい人』だけが知っていること」(ダイヤモンド社)。著者は「マナースクールライビウム」代表の諏内えみさん。

 永江さんが毎日新聞の8月22日朝刊書評欄の「話題の本」で取り上げたように、2月の発売以降、売れている。

 私の通勤途上の東京都内の駅ビルに入る書店では、売れ行き1位だった(8月29日)。「安倍首相 辞任表明」を伝える朝日新聞の同日朝刊には「25万部突破」を伝える広告があった。

 女性セブン9月3日号は特集「いまからでも遅くない『育ちのよさ』を手に入れる」で同書を取り上げ、「田園調布 芦屋 成城ほか 『本当のお金持ちが住む街』の素敵なルール」「『名家生まれの有名人』華麗なる秘話」などと展開した。

 「育ちがいい人」だけが知っていることって一体何だ? 庶民には想像つかないことがあるから本にしたのだろうと興味津々で読んだら拍子抜けした。

 婚活やお受験に成功するためのマナー本の類いだからだ。「育ち」とは、ちょっとした身のこなしや言葉遣いに表れる印象やたたずまいとのことで、「ふるまい」「みだしなみ・ファッション」「会話」「訪問」「買い物」「食べ方」などについて257もの指南が並んでいる。

 「その場に違和感のない装いをする」とか「人を待たせない」とかマナー未満のものが多く、これだったらかなりの人が「育ちが良い」ことになるのでは?

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山田道子

元サンデー毎日編集長

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞社入社。社会部、政治部、川崎支局長などを経て、2008年に総合週刊誌では日本で最も歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長、紙面審査委員。19年9月退社。