藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

ペルー首都リマ「フジモリ大統領」が治めた国のその後

藻谷浩介・地域エコノミスト
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リマの歩行者天国「ラ・ウニオン通り」は地元の買い物客でごった返していた(写真は筆者撮影)
リマの歩行者天国「ラ・ウニオン通り」は地元の買い物客でごった返していた(写真は筆者撮影)

 1990年代以降の世界に、最も大きな爪痕を残した日本人政治家は、小泉純一郎氏や安倍晋三氏ではなく、アルベルト・フジモリ氏だろう。日本人移民2世で日本とペルーの二重国籍の彼は、学者から転じてペルー大統領となり、毛沢東主義ゲリラを鎮圧して治安改善と経済成長をもたらし、しかし独裁化して人権弾圧を行い、現在は禁錮25年の刑に服している。日系人も大統領になれる人種混淆(こんこう)の国・ペルーの首都リマは、どんなところなのだろうか。

 2017年8月初旬の午後3時前。クスコから1時間半のフライトで、リマに到着した。旧市街の中心商店街ラ・ウニオン通りまでは、タクシーで45分、2000円弱。都市圏人口1000万人の大都市リマには、観光客には無縁の市街地東部を南北に走る高架鉄道があるが、都心にはまだ軌道系交通機関はない(地下鉄を建設中)。従って渋滞は激しく、南北に都心を貫く専用車線を通る連節バス「メトロポリターノ」が、旅行者の頼みの綱となっている。

 しかし今回は、翌朝に次のフライトがあり、夜遅くまで歩けるほど治安が良さそうもなく、日暮れまでの間に歩ける範囲で都心を一周してみることにした。歩行者でごった返すラ・ウニオン通りから、狭い階段を上がった2階にフロントのある、小さなホテルに荷を置いて出発だ。

 赤道に近い南緯12度に位置する海沿いの町で、しかもほぼ雨の降らない砂漠気候なのに、気温は20度以下で、道行く人は厚着をしている。南極海から北上してくる寒流のペルー海流に、太平洋上で湿気を含んだ赤道西風が当たって冷やされ、6~9月には海霧がペルー海岸沿いの上空を厚く覆うのだという。毎日が晴天のアンデス高…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。