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コロナ後が勝負 次期首相に求められる「政策構想力」

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
記者会見する菅義偉官房長官=首相官邸で2020年9月7日、竹内幹撮影
記者会見する菅義偉官房長官=首相官邸で2020年9月7日、竹内幹撮影

 9月14日の自民党両院議員総会を経て、次の自民党総裁つまり次期首相は事実上、菅義偉氏に決まる見通しだ。だが、次期首相の政権運営は大変厳しいと思える。

 例えば、アベノミクスの継承といっても、約8年続いた安倍晋三政権の経済政策は、もう何年も前からネタ切れで、求心力のあるテーマづくりができなくなっている。人々の心をつかむようなテーマを提示するのも、次の政権では苦心するだろう。

 金融政策と財政政策によって経済を刺激しようとしても、動かせる政策の余地はほとんどない。マイナス金利の深掘りは銀行収益に打撃を与える。追加の財政政策を打つとしても、財源を明らかにせず、日銀による国債買い入れで賄うことは、財政不安を一層深刻にする。即効性のある経済対策を打ち景気刺激を行うことはかなり難しい。

株高、円安にはなったが…

 当然ながら、政権が恐れるのは支持率の低下だ。安倍政権が長期政権に成り得たのは、支持率の高さがあったからだ。逆に、近年の安倍首相を苦しめたのも、支持率の低下だった。支持率が高ければ、総選挙で勝てると他の政治家たちは期待するので、支持率は求心力の代理変数にもなってきた。

 支持率を高めるのに必要なのは政策の実績である。安倍政権ならば、就任時の株安・円高を株高・円安に導いた。第2次安倍政権誕生時の2012年12月は日経平均株価は1万円程度だったが、現在は2万3000円程度まで上昇した。為替は1ドル=85円が106円の円安になった。

 次期首相は、まずは新型コロナウイルス感染対策をさらに確実なものとして、人々の感染に対する不安を落ち着かせることだ。新型コロナはリスクでもあるが、うまく対応すれば…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。