経済記者「一線リポート」

アベノミクスと「そんたく政治」が残した“負の遺産”

大久保渉・毎日新聞経済部記者
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記者会見で辞任を表明する安倍晋三首相=首相官邸で2020年8月28日、竹内幹撮影
記者会見で辞任を表明する安倍晋三首相=首相官邸で2020年8月28日、竹内幹撮影

 7年8カ月に及ぶ第2次安倍政権が終わる。この間、経済が明るさを取り戻したのは事実だが、主導したのはアベノミクスの「第一の矢」である日銀の金融緩和と、「第二の矢」である政府の財政出動だ。不況や経済危機時に発動する金融・財政政策を、デフレ脱却を口実にカンフル剤として打ち続けたのだから、ある程度の好況を維持できたのは当然だと思う。

 しかも、恩恵を受けたのは円安で利益が膨らんだ大企業や、株高で資産を増やした投資家など富裕層が中心だ。私は中小企業や商店街を定期的に取材したが、「暮らし向きが良くなった」と答える人には、ほとんど出会わなかった。

 有効求人倍率がバブル期超えの水準に上昇するなど、雇用環境が良くなったのは事実だ。しかし、増えた雇用の多くは非正規で、雇用の「質」は改善できていない。少子高齢化で働き手が減ったことも寄与しているはずで、「これぞアベノミクスの成果だ」と言われても釈然としない。

 安倍首相は辞任会見で「成長の果実を生かし、幼児教育、保育の無償化などを行った」と、アベノミクスによる経済成長で無償化財源を確保したような言いぶりをしたが、これもおかしい。実際は消費税率10%への引き上げに伴う税収増が財源で、「成長の果実」のおかげではない。

 第2次安倍政権が発足した12年12月は、08年のリーマン・ショックや10年の欧州債務危機の傷が癒え、世界経済が回復に向かい始めた時期だった。

 そのタイミングで金融緩和と財政出動を行い、長期にわたってアクセルを踏み続けたのだから、アベノミクスは将来世代がいざという時に使うべき金融・財政政策の余力を食い潰し、大企業や富裕層など限られた人たちに大盤振る舞い…

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大久保渉

毎日新聞経済部記者

 1979年、ブラジル生まれ。2004年、京都大学総合人間学部卒、毎日新聞社入社。山形支局を経て09年から東京本社経済部。自動車などの民間企業、日銀、証券業界、金融庁、経済産業省、財務省を担当。15年から2年間は政治部で自民党などを担当した。19年5月から日銀、証券、金融庁を束ねる金融グループのキャップ。