米国社会のリアル

大坂なおみ選手の「抗議」に日系社会が共鳴する理由

樋口博子・ロス在住コラムニスト
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全米オープンテニスで勝ち上がる大坂なおみ選手。マスクには、警官による暴力の犠牲となった黒人男性の名前が書かれている=2020年9月8日、AP
全米オープンテニスで勝ち上がる大坂なおみ選手。マスクには、警官による暴力の犠牲となった黒人男性の名前が書かれている=2020年9月8日、AP

 米国の警察によってこれでもかと続く黒人への暴力や差別に対し、女子テニス・世界ランキング3位(9月14日時点)の大坂なおみさんが声を上げました。

 大坂さんは8月末、米ウィスコンシン州で起きた警官による黒人男性銃撃事件を受け、出場していた世界大会の準決勝を「プレーしない」と表明。「私はアスリートである前に一人の黒人女性」として抗議の意思を示しました。

 これは、警官による黒人男性への拘束死事件(5月25日)を機に世界に広まったブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命は大事だ)運動にも連なる行動です。

 この行動に米国では、スポーツ界やセレブ、そして一般の人々の間でも「勇敢」「誇り」などと称賛する声が続いています。一方、日本では「無責任」「日本国籍ならBLMに賛同するな」など、嘲笑や非難を伴う反応もツイッター上で流れ、意識のズレを感じます。

 米国の黒人の祖先は、奴隷制の時代にアフリカから強制的に連れてこられた人々が大半です。奴隷解放やキング牧師が率いた公民権運動を経た今も、黒人を「モノ」として扱うかのような差別や残虐行為は続いています。

 米国勢調査局によると、黒人は人口の12%。白人(62%)やヒスパニック(17%)と比べ、数的に少数であるにもかかわらず、黒人が警官に射殺されるケースは100万人当たり白人の3倍です。銃を保持していないときに警官から射殺されるケースも、全ての人種の中で黒人が最も多いのです。

 ここ7年間で警官が殺害したケースの99%は刑事責任が問われておらず、アカウンタビリティー(説明責任)もありません。(出典:民間団体のウェブサイト「Mapping Police Violence」)

 まるで黒人の命は「どうでもいい」かのように暴行、射殺される様子が、リアルな動画とともに拡散される時代になり、BLM運動は世界レベルで「歴史的な拡大」を見せています。

 私が暮らすロサンゼルス(カリフォルニア州)の日系人社会にもBLM運動は広がっています。一般的に高学歴・高収入で、社会的地位を築いているとされる日系人の間で…

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樋口博子

ロス在住コラムニスト

 兵庫県生まれ。ロンドン大修士(開発学)、東大博士(国際貢献)。専攻は「人間の安全保障」。2008年、結婚を期にロサンゼルスに移住。渡米前はシンクタンク、国際協力銀行、外務省、国際NGOで開発途上国支援に取り組んだ。米国で2019年に独立。地元コミュニティーを地域や日米でつなぐ活動をしている。カリフォルニア州議会下院議員アル・ムラツチ氏(民主党)は夫。