経済記者「一線リポート」

「アベノミクスの恩恵は」中小経営者が語った自負

釣田祐喜・毎日新聞経済部記者
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大和工業の主力製品「リベット」=埼玉県川越市で2020年9月1日、釣田祐喜撮影
大和工業の主力製品「リベット」=埼玉県川越市で2020年9月1日、釣田祐喜撮影

 東京都心から電車とバスを乗り継いで約1時間半。工場や住宅が建ち並ぶ国道沿いにある部品製造会社、大和(だいわ)工業(埼玉県川越市)を訪れると、名児耶(なごや)健治社長(47)が「わざわざ川越までようこそ」と笑顔で迎えてくれた。

 体育館ほどの広さの工場内には、60台近い機械がずらりと並ぶ。コイル状に巻かれた鉄や真ちゅうのワイヤを短く切断し、大きさが数センチほどの留め具「リベット」に加工する装置がほとんどだ。1967年の会社設立当時から使う年季の入った機械もあり、手入れをしながら大事に使っている。製品は卸売業者を通じて、自動車メーカーや電気機器メーカーに出荷しており、約20人が勤務する。

 ここを訪れたのは、数日前に安倍晋三首相が辞任を表明したからだ。看板としてきた経済政策「アベノミクス」は、自動車メーカーなどの大企業を中心に業績回復を後押ししたが、中小企業への波及は乏しい――。7年8カ月続いた第2次安倍政権の間、そんな評価を何度も耳にした。だからこそ、アベノミクスの終わりに当事者の意見を改めて聞いてみたいと思い立ったのだ。

 普段は株式市場の動向を主に取材しており、中小企業のつてが乏しい。そこで、自動車に関連する業界団体のホームページに掲載されていた会員名簿から、なるべく取引先に偏りがなさそうな企業を探して連絡を取った。その中で取材に応じてもらえたのが大和工業だった。

 アベノミクスの「第一の矢」だった金融緩和によって日銀が世の中に大量のお金を供給した結果、為替相場は円高から円安に傾いた。この円安が輸出企業を中心に恩恵をもたらしたが、「うちは3次、4次の下請け。元請けから順に内部留保を…

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釣田祐喜

毎日新聞経済部記者

 1978年大阪市生まれ。2005年毎日新聞社入社。山形、長崎、奈良、阪神各支局を経て、17年4月から大阪本社経済部で関西の企業や財界を取材。20年4月からは東京本社経済部で株式市場や上場企業を中心に取材している。