藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

エクアドル首都キト「インカ」の名残なき“常春の街”

藻谷浩介・地域エコノミスト
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世界遺産のキト旧市街。正面に見えるパネシージョの丘の上には天使の像が立つ(写真は筆者撮影)
世界遺産のキト旧市街。正面に見えるパネシージョの丘の上には天使の像が立つ(写真は筆者撮影)

 エクアドル。スペイン語で「赤道」。赤道直下の熱帯の山麓(さんろく)で育つ同国産のバナナは、日本でも人気だ。だが首都キトは、標高2800メートルの高原にあって、気温が通年十数度の「常春の街」なのだという。どんなところなのだろうか。

 2017年8月。ペルーの首都リマからキトへ、アビアンカ航空のエアバス319で1時間半。南米各国はブラジルを除きビザ不要で入国に時間はかからないが、キト空港から都心へは40キロ、タクシーで40分かかる。高速道路は、雄大な山岳地帯を縫うように市街へと降りていく。エクアドルは自国通貨を廃止しており、料金は30米ドルだった。

 キトの街は、南北に延びる谷間に、数十キロにわたって細長く拡散している。中央あたりにある新市街のホテルに午後2時に着き、3時前から市街地散策に出かける。爽やかな晴天で、前評判通りの春のような気温だ。

 軌道系交通機関のないキトだが、道路中央に設けられた専用レーンを走り、改札口のある駅のようなホームに止まるバスが南北に3路線ある。いわゆるBRT(バス・ラピッド・トランジット=バス高速輸送システム)だ。その一つの「エコビア」の愛称のある線に、新市街のバカ・オルティス駅から旧市街のプラザ・マリン駅まで、4~5キロ乗車してみる。数分おきに来る3連接車体のバスは、地元の人たちで混み合っていた。

 旧市街はスペイン風の歴史的建造物で埋め尽くされ、大勢の地元の人たちと観光客が歩いている。早くの1978年には世界遺産に指定された、南米でも屈指の美しい街並みだ。1ブロックの幅も街路幅も狭い碁盤の目状の、スペイン人が建設した街に共通する設計で、そこを高原の爽やか…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。