高齢化時代の相続税対策

92歳父の相続対策「自宅に6億円マンション」の秘策

広田龍介・税理士
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 東京都内在住のSさん(60)は3人きょうだいの次男で、実家を継いで両親と生活をしてきた。7年前に母が亡くなり、今は父(92)とSさん夫婦の3人暮らしだ。

 実家は、もともとは農家だったが、父の代に自宅の周りにある田畑の土地にアパートや貸家を建て、不動産賃貸経営へと移行した。だが、父も高齢になると、賃貸管理が重荷になってきた。そこでSさんが実家を継ぎ、不動産管理会社を設立して、父の資産管理と不動産賃貸事業を引き継いだ。

 父の資産管理にあたり、Sさんが気にしてきたのは、自宅敷地の有効活用と父の相続対策の二つだ。だが、どちらも思うようには進んでいない。

 自宅の敷地は先祖代々、菩提(ぼだい)寺から借りている借地だ。敷地面積495平方メートルと広いうえ、駅に近く、バス通りに面するなど好立地にあるが、老朽化した木造2階建ての自宅が建っているだけだ。そこで、Sさんは、賃貸マンションを建てて有効活用したいと思っている。

 しかし、寺に「底地を譲ってほしい」と何度か持ち掛けてきたものの、住職は「お寺としてそれはできない」という一点張りで、話を進めることができていない。

 相続対策については、母が亡くなった後、父が急に衰え、物忘れも目立つことから、急ぎたいと考えている。

 まず検討したのが、家族信託の活用だ。家族信託は、本人の判断能力があるうちに、財産の管理や運用を家族に任せる仕組み。財産の名義は父からSさんに移り、Sさんは父が元気なうちはその指示に従い、父が判断能力を失った後は、あらかじめ交わした信託契約に沿うかたちで、資産の有効活用や組み替えをすることができる。

 だが、残念ながら、高齢の父は家族信託…

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。