職場のストレス・マネジメント術

コロナ禍でも出社する役員の秘書を襲った「パニック症」

舟木彩乃・産業心理コンサルタント・カウンセラー
  • 文字
  • 印刷
 
 

 森さん(仮名、40代後半女性)は、電機メーカーの秘書課(15人)で役員付きの秘書をしています。努力家の彼女は、秘書技能検定1級を取得するなど研さんを積み、役員からも信頼されています。担当している役員(60代前半男性)は若い時から仕事とプライベートの境目なく働き続けてきたタイプで、毎日出社する必要のない役員に就任してからも、当然のように毎日会社に出ています。

 新型コロナウイルスの感染が拡大し始めたころから、森さんの会社はテレワークが中心となりました。秘書課員は、自分が担当する役員が会社に来る時以外はテレワークとなりました。

 森さんの担当の役員は、外出自粛期間中でも用事を作ってはよく出社していたので、彼女と秘書課リーダー(50代前半女性)は一緒に、役員に対して「感染されては大変ですから」などと言って、遠回しに出社する日数を減らしてほしいことを伝えていました。しかし、役員は意に介さず、森さんが出社する日もあまり減りませんでした。

 森さんは、自分だけでなく担当の役員も感染しないよう細かいことにも気を使い、ストレスがたまる日々でした。そんな中、ある日会社で彼女は異変に襲われました。

 エレベーターに1人で乗って、秘書課がある28階のボタンを押し、エレベーターが上昇し始めると、動悸(どうき)が激しくなり、心拍数が上がるのが分かりました。同時に胸の痛みを伴う呼吸困難、身震い、発汗などの症状が表れました。28階に着いても症状は続き、めまいも加わり、「このままでは死んでしまう」と必死の思いで救急車を呼びました。

 ただ、病院に着くころには症状はほとんど治まっていました。心配なので、脳や心臓の精密検…

この記事は有料記事です。

残り1019文字(全文1719文字)

舟木彩乃

産業心理コンサルタント・カウンセラー

 筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。カウンセラーとして8000人以上、コンサルタントとして100社を超える企業の相談に対応。一般企業の人事部などを経て、現在メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタントなど保有。著書に「『首尾一貫感覚』で心を強くする」(小学館新書)。