産業医の現場カルテ

「昼寝用!?」オフィスに横になれるベッドが必要な理由

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 田島さん(仮名、30代男性)は、従業員数50人超のITベンチャー企業の総務担当者です。私は田島さんから「従業員から気分転換のためのスペースに横になれる場所がほしいといわれたのですが、必ず備えなければならないのでしょうか?」と聞かれました。

 この会社は最近、従業員数が50人を超え、産業医の私と契約を結んだばかりです。会社は、常時50人以上の従業員が働く事業場では産業医を選任する義務があります。

 田島さんから「横になれる場所」について聞かれたのは、今年5月に私が初めて従業員の健康や安全を守るための職場巡視をしたときでした。この会社はリモートワークができる体制を整え、オフィスは従業員の固定席を設けないフリーアドレスにしており、気分転換などのための休憩室も備えています。働く環境の整備に積極的ですが、田島さんは「横になって寝られる設備まで必要なのですか」と言います。

 実は私からも「横になれる場所」の話をするつもりでした。労働安全衛生法に基づく労働安全衛生規則で、従業員50人以上か、女性30人以上が働く事業場には、従業員が横になれる休養所を男性用と女性用を区別して設置しなければならない、と定められているからです。ベッドなどが最低2台必要です。

 オフィスのスペースには限りがあります。ベッドを2台も設置しておくのは難しい場合が大半でしょう。ただ、従業員が急な体調不良などで一時的に体を横にすることもありえます。そうしたスペースだけでも確保しておく必要があります。

 田島さんは驚いたようで…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。