熊野英生の「けいざい新発見」

菅政権はアベノミクスと違う「経済成長」ができるか

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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日本経済の成長を高められるか…(首相就任から一夜明け、記者団の質問に答える菅義偉首相)=2020年9月17日、滝川大貴撮影
日本経済の成長を高められるか…(首相就任から一夜明け、記者団の質問に答える菅義偉首相)=2020年9月17日、滝川大貴撮影

 安倍晋三政権が終わり、菅義偉政権が始まった。アベノミクスも終わってみれば、「功績はありました」ということになるのか。一見して成果のように見えても、よく観察すると大きな課題を抱えていると感じられる。

アベノミクスの意外な事実

 アベノミクスが掲げた「成長戦略を通じて潜在成長率を高める」というテーマを見てみよう。内閣府が出す潜在成長率のデータは、2008年はゼロ%近くまで落ちたが、09年0.1%、10年0.4%、11年0.6%だ。そして、安倍政権下の15~19年は平均0.9%成長へと高まっている。確かに、これが安倍政権の成長率を支えたのである。

 こうしたデータは、アベノミクスが経済成長を演出したという状況証拠になっているが、その中身をみると意外なことがわかる。

 潜在成長率の内訳を寄与度で分解すると、ここ数年間は資本・労働の投入量の増加分が寄与して全体の成長率が上がっているのだ。資本・労働の投入量は、14年は0.1%増だったが、19年は0.5%増になった。反対に、それ以外の要因による寄与は、14年は0.7%増だったのが、19年は0.4%増と過去最低近くまで下がっている。

イノベーションは停滞していた?

 経済学の考え方では、資本・労働の投入量は事業の規模拡大、つまり量的な変化を示す。それ以外の要因は、トータルな要因(ファクター)の生産性(プロダクティビティー)だ。これを「全要素生産性」(TFP=Total Factor Productivity)という。資本・労働という量的な変化に対して、TFPは質的な要因あるいは、技術進歩、イノベーションを示す。

 つまり、上記の数字が示すところは…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。