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「年金を繰り上げ受給したい」58歳会社員の理想と現実

岩城みずほ・ファイナンシャルプランナー
 
 

 会社員のA郎さん(58)は、60歳で定年を迎えます。新たに挑戦したいことがあるため、定年後は仕事をせず、当面は資格取得の勉強に励む予定です。その間の生活費を賄うため年金を繰り上げ受給したいと考え、その注意点などを聞きに私のところに来ました。

繰り上げ受給の減額率

 A郎さんが65歳から受け取れる年金見込み額は、現在のところ老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて年約204万円です。パートの妻(54)が65歳になるまでの4年間は加給年金が年約39万円上乗せされます。

 60歳になる月に年金の繰り上げ受給を請求した場合、60カ月(5年)繰り上げることになります。現行では1カ月あたり0.5%減額されるので、全体で30%減額され、年金見込み額は年約142万8000円です。配偶者の加給年金は繰り上げられないので、A郎さんが65歳になってから上乗せされます。その後の4年は年約182万円となります。

 繰り上げ請求は、基礎年金と厚生年金を同時に減額することになり、いずれか一方を繰り上げることはできません。一方、年金の受給を遅らせる繰り下げ請求の場合は、別々に繰り下げることができます。

 注意すべき点は、いったん繰り上げ請求をすると、一生涯の減額率が決まり、取り消しや変更ができないことです。また、65歳までに障がい者になった場合でも、原則として障害年金が支給されません。国民年金に60歳まで加入して…

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ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、社会保険労務士、MZ Benefit Consulting 代表取締役、オフィスベネフィット代表、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、顧客本位の独立系アドバイザーとして、家計相談、執筆、講演などを行っている。著書に「結局、2000万円問題ってどうなったんですか?」(サンマーク出版)など多数。