いま地球環境を考える

菅政権に求めたいエネルギー政策の「縦割り打破」

小西雅子・WWF(世界自然保護基金)ジャパン専門ディレクター
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首相就任と内閣発足から一夜明け、記者団の質問に答えるためマスクを外す菅義偉首相=首相官邸で2020年9月17日、滝川大貴撮影
首相就任と内閣発足から一夜明け、記者団の質問に答えるためマスクを外す菅義偉首相=首相官邸で2020年9月17日、滝川大貴撮影

 菅義偉首相は9月16日の就任記者会見で「行政の縦割り、既得権益、あしき先例主義を打ち破っていく」と表明しました。このキャッチフレーズは、気候変動で気象災害に見舞われる今の日本に最も求められる視点だと思います。

 菅首相は「ポストコロナ時代にあっても、引き続き環境対策、脱炭素社会の実現、エネルギーの安定供給にもしっかり取り組む」とも述べましたが、残念ながら具体策はなく、これら環境問題に対する言及は希薄でした。

 新政権にとって新型コロナウイルス感染症の収束と経済の立て直しが最重要課題であることは間違いありません。しかし、「国民のために働く内閣を作る」と明言した菅首相には、「過去の姿を取り戻す復興プラン」ではなく、脱炭素型で持続可能な社会を目指す「グリーン・リカバリー」と呼ばれる復興プランを打ち出してもらいたいと思います。

経産省と環境省の「縦割り」

 安倍晋三前首相は、2019年に「環境は経済のコストではなく、競争力の源泉」と表明し、脱炭素化を明記した経済成長戦略を発表しました。でも、世界のトレンドとなっている「50年に温室効果ガス排出ゼロ」という目標を見送り、排出量の多い石炭を使用し続けるなど、有効な政策を示しませんでした。

 その背景には、高度経済成長の成功体験にとらわれたままの日本では、鉄鋼や電力などの重厚長大産業がいまだ産業界の代表であり、脱炭素化に後ろ向きなことがあります。

 強大な既得権益を持つ経済産業省がエネルギー政策を所管し、その背後で環境省が環境政策を立案せざるを得ないという構造的な問題を打破しない限り、日本の脱炭素社会は進みません。

 温室効果ガスの9割以上がエネルギー起源で…

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小西雅子

WWF(世界自然保護基金)ジャパン専門ディレクター

 神戸市生まれ。米ハーバード大修士課程修了、法政大博士(公共政策学)。中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005年に国際NGOのWWFジャパンへ。地球温暖化防止の国際交渉などで施策提言を行う。15年から昭和女子大特命教授を兼務する。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会街づくり・持続可能性委員会委員、環境省中央環境審議会委員なども務めている。