
A美さん(32)は、あるメーカーでメンバー10人ほどの品質管理部で働いています。昨年、この部署へ新しく配属された若手スタッフのフォローを任せられるようになってから、残業が増え、体調が思わしくない状況に陥っています。
一目置かれる存在
A美さんは、約3年前に同業他社から転職してきました。勉強熱心で専門知識も豊富です。周囲への気配りを欠かさず、仕事に抜け漏れがなくミスもほぼありません。仕事の進め方にはムダがなく、ほとんど残業することもありませんでした。
そうした仕事ぶりが目に留まり、2年前には社内横断の業務改善チームのメンバーに選ばれ、他部署の人からも一目置かれる存在になっていきました。
品質管理部のメンバーも何かあれば、まずA美さんに相談するようになっていました。そんなA美さんは上司の信頼も得て、昨年から部署に配属された新しい若手のフォローを任せられるようになりました。しかしそれ以降、残業が増えていくことになりました。
業務量が増えて不眠に
A美さんがフォローする若手スタッフは、業務の処理が苦手ではないものの、その目的をあまり深く考えない傾向がありました。言われたことを言われた通りにやるだけで、ミスが目立ちました。若手がミスをすることで、部署のメンバーだけでなく、他部署の人が困ってしまうこともありました。
ミスに対するクレームを受けるのはA美さんでした。A美さんは他のメンバーに迷惑がかからないよう、フォローする若手の業務を細かく指示するなど工夫するよう努めました。その結果、若手のミスは…
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井寄奈美
特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/