
トランプ米大統領を与党・共和党の大統領候補に再指名した全国大会が8月24~27日に行われた。トランプ氏は最終日の指名受諾演説で、「(野党の)民主党の管轄する市では、暴力や略奪が横行している。法と秩序は守られなければならない」と訴え、選挙戦の最終盤で、「法と秩序」を守る大統領として自らを売り込むことに意欲を示した。
BLM運動をやり玉に
今年5月に中西部ミネソタ州で黒人男性が白人警察官に首を押さえつけられたまま死亡した事件を受け、人種差別に反対する抗議の集会が各地に広がった。「ブラック・ライブズ・マター」(BLM、黒人の命は大事だ)運動は、大部分は平和裏に行われた。しかし、一部で暴徒化した集団が商店街を襲ったりするなど手が付けられなくなっている地域がある。
トランプ氏は、当初からこの抗議運動に否定的で、取り締まる警察官を擁護する姿勢を示してきた。ただ、その立ち位置は微妙に変化した。
暴徒が、南北戦争期に奴隷制を守る側に回った南軍の将軍像などの撤去を始めたことに対し、像を破壊すれば厳罰に処すると表明。自らの支持基盤である南部の白人保守層にアピールするためのものだった。
それが、党大会では、「民主党の市長に委ねられた町の治安はどんどん悪化している。民主党の大統領が誕生すれば、こうした暴徒があなたの町にもやってくる」と大都市郊外の住民に向けたメッセージに変わった。
郊外の女性に照準を定めたが…
大統領選で接戦となる州は「スイング・ステート」(揺れる州)と呼ばれる。しかし、州全体が揺れるわけではなく、実際には、州の一握りの「スイング・カウンティー」(揺れる郡)が州全体の結果を決める…
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古本陽荘
毎日新聞北米総局長
1969年生まれ。上智大文学部英文科卒、米カンザス大大学院政治学修士課程修了。97年毎日新聞入社。横浜支局、政治部、外信部を経て2018年12月から北米総局長(ワシントン)。