
大阪万博の閉幕直後、1970年10月1日に運転を開始した関西の「新快速」(JR西日本)が、今年でデビュー50周年を迎えた。この50年で国鉄民営化(87年)などを経て、新快速は京都、大阪、神戸の都市間輸送に限定された列車から、関西全域を東西に貫く高速列車ネットワークへと進化した。
新快速は、JR東海道線の米原駅(滋賀県)から山陽線の姫路駅(兵庫県)までが基本的な守備範囲だ。例外的に福井県の敦賀まで走っているが、それを除けば滋賀、京都、大阪、兵庫の2府2県から出ることはない。関西中枢部の輸送を基軸とする点で一貫している。
あくまで「地域内列車」であり、隣接する中京圏や中国地方、北陸方面などへの移動手段では主役にならない。地域外に出る場合にJRが想定しているのは新幹線や在来線の特急だ。それゆえ、新快速を「特別料金不要の特急」と呼ぶ表現を見かけるが、違和感を覚える。JRでは新快速と特急との間に明確な持ち場の違いがあるからだ。
地理的条件が生んだ高速列車
新快速は、持ち場である関西地域の地理的かつ人口分布的な要因から、関東などと比べ独自の発達を遂げたと言ってよい。
関東地方は平野面積が広く、東京、神奈川、埼玉と千葉県北部の「東京圏」には人口密集地帯が面的に広がっている。鉄道輸送に適した地域だが、例えば東京-横浜といった大都市の拠点駅間輸送のみには集中しにくく、列車の停車駅は多めになりがちだ。
そしてその外側の北関東、茨城、南房総方面になると、今度は地域外輸送の様相となる。東京から水戸、宇都宮、高崎などまでは100キロ(営業キロ、以下同)を超え、1時間程度で結ぼうと思えば、新幹線や停車駅が少ない特急の守備範囲となるだろう。
その点、関西は人口密集地帯がさほど面的には広がっていない。京…
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