
最近の大学のミスコンでは、候補者がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で自己アピールをするようになりました。それに対して、SNSでは応援だけでなく、誹謗(ひぼう)中傷がみられます。
今年5月、プロレスラー・木村花さんがSNSで誹謗中傷を受けた後に死去しました。ミスコンの運営団体とスポンサー企業は素人である学生の候補者を精神的にサポートする責任を果たしているのでしょうか。
SNSでリアリティー番組化
2010年代以降、大学のミス/ミスター・コンテストでは、候補者がツイッターやインスタグラムで、日常の出来事や思いをつぶやいてファンの獲得を試みるようになりました。ポーズを決めた写真、ダンスを披露する動画などの投稿、ライブ映像も見られます。
アピールの仕方はさまざまですが、プライベートな話を投稿し、大きな共感や反感を呼ぶケースもあります。たとえば今年、ミス東大候補者の次のツイートが反響を呼びました。
「うちの服装をバカにしてきた東大生も、(略)重いとか疲れたとか言って振ってきた元彼たちも、お前がミスコンでてる価値なんてないって言ってきた奴らも、全員見返すために生きてる」
若者が自分のプライベートを見せつつ、個性を表現し、最終日まで成長していく姿をスクリーン上で視聴するイベントは、まるでテレビ番組のリアリティーショーのようです。候補者は、SNSへの投稿にリプライするファンとやりとりをします。SNS上には候補者の人格や外見への誹謗中傷も多くみられます。
木村花さんの命奪った誹謗中傷
最近の学生はSNS利用により、常に友人・知人から監視されている感覚を持っています。また、周囲…
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藤田結子
明治大商学部教授
東京都生まれ。慶応義塾大を卒業後、大学院留学のためアメリカとイギリスに約10年間滞在。06年に英ロンドン大学で博士号を取得。11年から明治大学商学部准教授、16年10月から現職。専門は社会学。参与観察やインタビューを行う「エスノグラフィー」という手法で、日本や海外の文化、メディア、若者、消費、ジェンダー分野のフィールド調査をしている。