
菅義偉首相のお膝元、横浜市に本社を構える日産自動車の経営に先行き不透明感が漂っている。裾野の広い自動車メーカーの経営悪化は、下請けの中小企業や地域の雇用へ与える影響も大きい。首相も大きな関心を寄せる日産の経営に、政府が積極的に関与する局面は来るのだろうか。
「官房長官時代から、地元だけに日産の経営に関心を持っていた。首相になってもそれは変わらない」。経産省幹部はこう語る。
横浜が創業の地である日産は、神奈川県内に完成車工場や研究・開発拠点など主要な拠点を多く構えている。こうしたことから、日産は2009年に本社を東京・銀座から菅氏の地盤(衆院神奈川2区)でもある横浜市西区に移転した。移転を機に、神奈川県に影響力を持つ菅氏との関係は、より深まっていったとみられる。
重要な案件は逐次報告
官房長官時代には日産の幹部が重要な案件について首相官邸に出向き、菅氏に報告する姿が目撃された。
三菱自動車との資本提携を発表した16年5月12日には記者会見を前に、政府とのパイプ役だった渉外担当役員の川口均専務(当時)が官邸を訪問し、提携内容について説明した。カルロス・ゴーン前会長が金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕された翌日の18年11月20日にも川口氏は官邸に状況説明に出向いた。
菅氏は11月20日の記者会見で「(パートナーの仏ルノーなどとの)アライアンスなどで、お手伝いすることができればしていきたい」と述べ、政府として日産をサポートする姿勢を鮮明にした。
その日産の経営環境は厳しさを増している。20年3月期決算は6712億円の最終赤字だったが、21年3月期も6700億円の最終赤字の予想で…
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工藤昭久
毎日新聞経済部記者
1974年生まれ。立教大学法学部卒。生命保険会社勤務を経て、2000年毎日新聞社入社。静岡、浜松支局を経て04年から東京経済部。財務、総務、経済産業、農林水産などの中央官庁や産業界、金融業界、財界などを幅広く取材。18年4月から大阪経済部編集委員として関西経済を取材。20年4月から経産、農水両省、エネルギー業界の取材を束ねるキャップ。