高齢化時代の相続税対策

仲良し家族の遺産相続協議「先妻の子」の意外な一言

広田龍介・税理士
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 東京都内に住むYさん(85)が亡くなった。相続財産の評価額は約3億円。主なものは自宅マンションと都内の商業地にある賃貸ビル1棟で、借入金の返済などに充ててしまったため、現預金などの金融資産はあまりないという状況だった。

 相続人は、Yさんと同居していた妻M子さんと、長女、長男、次女の4人だ。実は、長女は先妻の子だが、先妻は長女が3歳の時に亡くなり、後妻のM子さんは実の子と分け隔てなく愛情を注いできた。3人の子は異母きょうだいという感覚もなく、仲良く育ってきた。

 だが、このむつまじい家庭環境のなかにも、相続問題の芽は潜んでいた。

 Yさんの遺産分割についての話し合いが家族で行われた。現預金など納税のための資金がないため、できるだけ相続税の負担は抑えたい、という点では一致していた。

 亡くなった人が所有していた宅地を相続する場合、一定要件を満たせば、相続税評価額が大幅に減る「小規模宅地」の特例がある。亡くなった人かその人と生計を一にしていた親族が住む「特定居住用」は330平方メートルまで80%が、賃貸ビルなど「貸し付け事業用」は200平方メートルまで50%が減額される。

 これらの特例を使えば、課税財産額は1億6000万円を下回り、相続税の負担を抑えることができる。そこですべての財産をM子さんが相続する方向で話し合いが進んだ。

 そして、将来、M子さんが亡くなったときの「2次相続」で「子3人で均等になるように分ければいいじゃないか」と話はまとまりかけた。

 その時、長女がポツリといった。「でも、私はお母さんと血のつながりがないから」

 M子さんと長男と次女は、長女が何を言いたいのかがわからず、…

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広田龍介

税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。