熊野英生の「けいざい新発見」

コロナ後の日本経済回復は「√」ルートの形になる?

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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日本経済は回復軌道に乗れるか…(首相官邸に入る西村康稔経済再生担当相)=2020年9月15日、竹内幹撮影
日本経済は回復軌道に乗れるか…(首相官邸に入る西村康稔経済再生担当相)=2020年9月15日、竹内幹撮影

 国のリーダーが安倍晋三首相から菅義偉首相に代わり、メディアの注目が菅氏の言動に向く分、新型コロナウイルス問題や、それによって打撃を受けた実体経済の動向から、人々の関心が薄らいでいるように感じられる。ただ、実体経済の回復は思いのほか良くない。早晩この事実に人々が気が付いて、問題視することになると筆者は見ている。

 モノの動きを反映する商業動態統計(経済産業省)の卸小売販売額を見てみよう。緊急事態宣言が出された4月以降の前月比の推移は、4月マイナス9.8%、5月マイナス6.1%と大幅なマイナスだった。だが、6月に前月比プラス8.1%と大きくリバウンドした。1人10万円の特別定額給付金の効果が、6月に一気に表れた。

 だが、良くないのは、この効果が7月以降息切れしていることだ。7月はプラス0.5%、8月は同1.4%と伸びが小さく、回復のペースは足踏みしている。

 消費のモノとサービスのうち、サービスはコロナ感染を警戒して低迷している。モノの消費はサービスより傷が浅く、消費の維持に貢献してくれるはずだった。従って、モノの販売高が足踏みしているということは、回復力を大きく失っていることを意味する。

 日本経済の回復は、V字とはほど遠いものになるだろう。回復の形状は数学記号の「√(ルート字形)」のようなものになるのではないか。リバウンド期間はすぐに終わり、需要はフラットなまま停滞していくイメージだ。

 このように言うと、内需は低迷でも外需によって景気をけん引できるのではという反論が出てくる。確かに、中国や東アジア経済の回復は今のところ順調だ。しかし、米国のモノの消費は日本とそっくりの状況になってい…

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熊野英生

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。