
何だかいつもと違う………。米大統領選の「主戦場」が、コロナ禍の影響でSNSなどインターネットの世界に移行しています。
私の夫はカリフォルニア州議会のアル・ムラツチ下院議員(民主党)です。なのでいつもなら11月の選挙を控えたこの時期は、私も何百人もの支援者らと行動を共にし、その盛り上がりを肌で感じてきました。ところが今回は、なんとも「違和感」ばかりがつのる選挙戦の終盤を迎えています。
米国の選挙の風物詩である決起集会や資金集めのイベント、候補者と住民をつなぐお茶会などは、どれも感染源となる恐れがあるため今年は中止になりました。その一方で、かつてない盛り上がりを見せているのがインターネット上での選挙戦です。
誇張やウソが横行
SNSではトランプ陣営や支持者らが「演出」に力を注いでいます。誹謗(ひぼう)中傷だけでなく、誇張やウソの情報が、ときにはフェイク画像や刺激的な音楽と共に飛び交います。バイデン陣営はトランプ政権の失策に焦点を当てて攻撃しますが、トランプ陣営の「何が真実かをわからなくさせる手法」も巧妙化し、混迷を極めています。
誇張やウソが含まれると知りながら、同じような映像や画像を何度も流すのもそうした手法の一つです。例えば大坂なおみ選手の「マスク抗議」で日本でも認知度が上がったブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命は大切だ)運動。大多数は非暴力のデモにもかかわらず、トランプ陣営は「極左の暴徒」「街の破壊者」などと一部の暴徒による行為を誇張し、扇情的なシーンを流し続けています。
BLM運動を「都市部で横行する暴力」「警察を解体する過激な運動」と描き、「暴徒があなたの町…
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樋口博子
ロス在住コラムニスト
兵庫県生まれ。ロンドン大修士(開発学)、東大博士(国際貢献)。専攻は「人間の安全保障」。2008年、結婚を期にロサンゼルスに移住。渡米前はシンクタンク、国際協力銀行、外務省、国際NGOで開発途上国支援に取り組んだ。米国で2019年に独立。地元コミュニティーを地域や日米でつなぐ活動をしている。カリフォルニア州議会下院議員アル・ムラツチ氏(民主党)は夫。