海外特派員リポート

コロナで一変「英国パブ」サッカー談議もうできない?

横山三加子・毎日新聞欧州総局特派員(ロンドン)
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英国のパブではミラーさん(右)ら従業員にマスクなどの着用が義務付けられた=ロンドンで2020年9月29日、横山三加子撮影
英国のパブではミラーさん(右)ら従業員にマスクなどの着用が義務付けられた=ロンドンで2020年9月29日、横山三加子撮影

 新型コロナウイルスの影響が英国名物の酒場「パブ」にも及んでいる。混み合うカウンター越しにビールを注文し、友人や居合わせた客と立ち飲みをしながら政治談議やサッカーの試合で盛り上がる――といった英国のありふれた風景が消えてしまった。そんなパブを改めて訪ねた。

 「パブって何?」と英国人に尋ねると、よく返ってくる答えが「ソーシャライズ(社会的交流)」。その身近さゆえ「パブに行くのは、家に帰るようなもの」と解説するパブ従業員もいた。

 起源は紀元前までさかのぼるとされる。パブという呼び名は15~16世紀ごろに使われていた「パブリックハウス(公共の家)」の短縮系であることからも、酒場を超えた酒場と言える。英国全体で約4万7000店舗ある。

 新型コロナは、そんなパブに3月下旬から3カ月超の休業を強いた。一斉休業は英国のパブの歴史の中で初めてとされる。

 全国のパブに休業を要請した英国のジョンソン首相も「異常なことをやっていると認める。英国人が生まれながらに持つ『パブに行く』という不可侵の権利を奪っている」と、苦悩を吐露するほどだった。

 7月以降、パブは順次再開したが、以前の姿ではなくなった。ロンドン中心部にあるパブ「ザ・コック&ライオン」を9月末に訪ねると、スマートフォンで店頭に貼られたQRコードを読み取るよう求められた。英政府が店に来店客のデータ把握を義務付けているためだ。仕事帰りの一杯を楽しみに来た客がアプリの設定を急いでいた。

 店内を見回すと、テーブルの間にはプラスチック製の仕切り板が設置され、隣の人の顔は見えず、会話をするのは難しそうだ。テーブルも間引きされており、席数は120人から70人に…

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横山三加子

毎日新聞欧州総局特派員(ロンドン)

1981年、埼玉県生まれ。法政大学社会学部卒。2004年、毎日新聞社に入社。岡山支局、大阪本社経済部を経て13年から東京本社経済部。電機・通信業界、経済産業省や財務省、財界などを担当。19年10月から現職。