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コロナで収入減の社員「副業認めてほしい」人事部長は

井寄奈美・特定社会保険労務士
 
 

 A郎さん(49)は従業員数約120人の機械部品加工メーカーの人事部長です。昨年、社内で働き方改革を主導し、労働時間の削減に成功しました。ところが、今年は新型コロナウイルスの影響もあって、収入の減った従業員から副業の可否に関する相談が増えており、悩んでいます。

従業員から副業許可の要望

 昨年、会社が取り組んだ働き方改革では当初、現場から反発がありました。A郎さんは、働き方改革が国の要請であり、改革が成功して会社の収益率が上がれば賞与や昇給で従業員に還元する、という二つの理由で改革を押し切りました。その結果、平均月30時間程度だった残業は月10時間ほどになり、月1~3回あった土曜出勤はほとんどなくなりました。年次有給休暇を積極的に取る従業員も増えました。

 しかし、従業員に十分な還元ができていないのが現状です。会社は例年2~3月が繁忙期で、残業は月40時間を超えていました。しかし、今年はそもそもの受注量が減ったこともあり、ほとんど残業がありませんでした。

 4月の昇給も大幅にアップできませんでした。現場の効率はよくなったものの、今後の受注の見込みが不透明だったためです。夏のボーナスは昨年と同じくらい出せましたが、現状では冬のボーナスは大幅ダウンの見込みです。4月以降はコロナ禍への対応で出勤調整を行…

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特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/