経済記者「一線リポート」

「引き取り手のいない遺骨」が私たちに鳴らす警鐘

三上剛輝・毎日新聞経済部記者
  • 文字
  • 印刷
引き取り手のいない遺骨が一時保管されている横須賀市役所の倉庫。市福祉専門官の北見万幸さんが案内してくれた=神奈川県横須賀市で2020年6月24日、三上剛輝撮影
引き取り手のいない遺骨が一時保管されている横須賀市役所の倉庫。市福祉専門官の北見万幸さんが案内してくれた=神奈川県横須賀市で2020年6月24日、三上剛輝撮影

 船舶が行き交う浦賀水道を見渡せる神奈川県横須賀市役所の6階。その一角にあるドアを開け、薄暗い小さな倉庫に入ると衝撃を受けた。棚には透明なビニール袋に包まれた木箱がずらりと並び、ほとんどに住所や氏名が記載されている。木箱の中には、身元が判明しているのに引き取り手がいない遺骨が眠っている。

 「現代社会が危険な方に向かっていると教えてくれている。これは遺骨が鳴らす警鐘です」。同市役所の福祉専門官、北見万幸(かずゆき)さん(62)が説明してくれた。その途中、「あれ、この人……」と一つの木箱を見詰め、しばらく沈黙した後に「仕事で知り合った女性だ。この人もここ(倉庫)に来ちゃったのかあ」とつぶやいた。

 一昔前、引き取り手がいない遺骨はほとんど身元不明者で、骨つぼには番号が振られていた。昨今は単身高齢者の増加や家族関係の希薄化もあり、氏名や住所が分かっている遺骨が9割以上を占めるという。

 横須賀市では、引き取り手がいない遺骨でも持ち物などから身元が分かれば、住民票や戸籍などから親族を探しだして連絡している。しかし、親族に遺骨の受け取りを拒否されたり、返事がなかったりするケースが1990年代から徐々に増えたという。2000年代に入ると「携帯電話の普及で更に連絡を取りにくくなった」(北見さん)。

 1人暮らしで亡くなっていた場合、固定電話が主流だった頃は緊急連絡先を記した備忘録が自宅に残されていることが多かった。それがなくても戸籍や住民票から親族の氏名や住所を割り出し、「104番」の番号案内サービスから連絡先の電話番号を知ることができた。

 ところが、携帯電話が普及するにつれて固定電話は減り、プラ…

この記事は有料記事です。

残り1243文字(全文1943文字)

三上剛輝

毎日新聞経済部記者

 1982年名古屋市生まれ。名古屋大経済学部卒。中部地方の経済紙記者を経て、2009年毎日新聞社入社。岐阜支局、中部報道センターを経て、19年10月から東京経済部。主に保険業界や信託銀行、株価の動向を取材している。