経済記者「一線リポート」

「自宅でビール作りたい」伊勢の餅屋21代目の夢

安藤大介・毎日新聞経済部記者
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伊勢角屋麦酒のクラフトビール=同社提供
伊勢角屋麦酒のクラフトビール=同社提供

 「日本でも自宅でビールを造れるようにしたい」。そんな未来を夢見て活動する社長がいる。クラフトビールメーカー「伊勢角屋麦酒」(三重県伊勢市)社長の鈴木成宗(なりひろ)さん(52)だ。

 「米国では家庭でビール造りを楽しむホームブルワー(醸造家)が約110万人いて、趣味を楽しむ感覚でビールを造っています。それが日本では違法行為。世界的にも特殊な国なんです」と口調は熱を帯びる。

 2019年10月には家庭でのビール醸造の解禁を目指す団体「日本ホームブルワーズ協会」を設立した。いったいどういうことなのか。

 「もし、プロ野球選手になるまで、バットを握ってはいけないと法律で定められていたらどうかと想像してみてください。もしくはシェフになるまで包丁を持ってはいけない、と。家庭でのビール製造を取り巻く日本の状況は、そういうことです」

 鈴木さんはビール醸造を巡る日本の規制の現状を、こう例えてみせた。

 酒税法はアルコール分1%以上の飲料を酒類と定義。家庭で免許を受けずに酒類を製造した場合、10年以下の懲役または100万円以下の罰金を科せられる。一方、免許を得るには年間60キロリットルを製造することが必要だ。家庭で趣味として造るような規模ではない。

 もし、将来的に規制が緩和され、家庭で気軽にビール造りができるのなら、私もぜひ造ってみたい。だが、なぜクラフトビールメーカーが、わざわざ家庭のビール醸造解禁を目指すのか。そこにはクラフトビールに情熱をささげてきた鈴木さんならではの思いがあった。

 鈴木さんの実家は、1575年創業の餅屋「二軒茶屋餅角屋本店」。お伊勢参りの参拝客にきなこ餅を振る舞う茶店だ。大学卒業後…

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安藤大介

毎日新聞経済部記者

 1977年、愛知県生まれ。慶応大経済学部卒。2002年、毎日新聞社入社。大阪本社経済部などを経て、14年から東京本社経済部。エネルギー業界や日銀、民間企業、経済産業省などを担当。18年から津支局次長。20年10月から東京経済部で日銀、証券、金融庁の取材を束ねるキャップ。