経済記者「一線リポート」

アンチ自助?公明党「ベーシックサービス」に潜む思惑

村尾哲・毎日新聞経済部記者
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公明党全国大会で両手を上げて拍手に応える石井啓一幹事長(右から2人目)ら=東京都千代田区で2020年9月27日、北山夏帆撮影
公明党全国大会で両手を上げて拍手に応える石井啓一幹事長(右から2人目)ら=東京都千代田区で2020年9月27日、北山夏帆撮影

 9月27日の公明党の党大会で、新たに幹事長に就任した石井啓一氏は「ベーシックサービス(BS)」を検討していくと表明した。これは医療や介護、教育など不可欠なサービスを無償で提供する構想で、菅義偉首相が唱える「まずは自助」に対するアンチテーゼと言える。自民党と連立を組む公明党の思惑とは……。

 石井氏は党大会で「低所得層だけでなく中間層も含むすべての人を受益者とし、社会に分断をもたらさないようにする新たなセーフティーネットの整備を求める声が高まっている」と指摘。「弱者を助ける制度から弱者を生まない社会へと福祉の裾野を大きく広げる」と呼びかけた。最近は提唱者の井手英策慶応大教授を党会合に招いたり、井手氏のインタビュー記事を党機関紙にたびたび掲載したりするなど、次期衆院選に向けて党員への浸透を進めている。

 井手氏によると、1990年代後半以降の雇用の非正規化や所得水準の低下などから、今や1人暮らし世帯の5割、2人以上世帯でも3割は貯蓄がなく「勤労と貯蓄を前提とした自己責任を叫ぶのは、ほとんど時代錯誤に近い」(「潮」2020年3月号)。自己責任で将来不安に備えるのは限界を迎えており「税をつうじて『社会の蓄え』をつくり、たがいに命やくらしのニーズをみたしあっていく」(井手氏の著書「幸福の増税論」)べきだという。医療、介護、教育、子育て、障害者福祉などの基幹サービスを所得制限なしで無償化し、これまで負担者だった中間層以上も受益者とすることで、社会の安定につなげる狙いだ。

 基本理念に「自助、共助…

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村尾哲

毎日新聞経済部記者

1983年東京生まれ。上智大卒業後、2008年毎日新聞社入社。福岡報道部、鹿児島支局を経て、13年4月から東京本社政治部で官邸、防衛省、自民党などを担当。20年4月から東京本社経済部で財務省や内閣府を担当している。