
10月1日に東京証券取引所でシステム障害が発生し、株式全銘柄の売買が終日停止したが、その“余波”が懸念されている。障害の原因が十分に究明されていないなかで、「取引所のあり方」に議論が飛び火する気配があるからだ。
障害は、システムを構成する「共有記録装置」と呼ばれる機器に故障が発生し、バックアップシステムが作動しなかったのが原因と説明された。今回の故障は、もう1台ある装置に自動的に切り替える対象から抜け落ちていたという。
システムは、「障害が必ず発生する」ことを前提に構築すべきだ。そのために、バックアップシステムや非常事態を想定した対応計画の策定が不可欠になっている。そこまで包含したのが、本来のシステム戦略である。
東証は社外取締役4人で構成する調査委員会を設置した。そこでは、バックアップシステムがなぜ作動しなかったかだけでなく、システムが機能不全となった構造的な問題を検証し、公表すべきだ。
国際金融センター構想とからんで
一方、この事態を契機に浮上してきた議論がある。それは「東証と大阪証券取引所(現大阪取引所)を統合し、株式売買を東証に一本化したことの是非」だ。
統合により大阪取引所は金融派生商品(デリバティブ)の取引に特化した。名古屋など国内の他の3証券取引所は東証と同じシステムを使っており、東証の障害で日本中の株式売買が停止した。株式売買を東証と旧大証との2本柱にしておけば、そうした事態は回避できたという考え方だ。
この議論には、政府内で最近浮上している「東京以外の地域への国際金融センター誘致」という問題がからんでいるようにみえる。株式売買が集中する東証のバックアップと…
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