ニッポン金融ウラの裏

東証「終日売買停止」で勢い増す“証取の分散論”のワナ

浪川攻・金融ジャーナリスト
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システム障害による終日売買停止から一夜明け、取引が再開された東京証券取引所=東京都中央区で2020年10月2日午前9時9分、宮武祐希撮影
システム障害による終日売買停止から一夜明け、取引が再開された東京証券取引所=東京都中央区で2020年10月2日午前9時9分、宮武祐希撮影

 10月1日に東京証券取引所でシステム障害が発生し、株式全銘柄の売買が終日停止したが、その“余波”が懸念されている。障害の原因が十分に究明されていないなかで、「取引所のあり方」に議論が飛び火する気配があるからだ。

 障害は、システムを構成する「共有記録装置」と呼ばれる機器に故障が発生し、バックアップシステムが作動しなかったのが原因と説明された。今回の故障は、もう1台ある装置に自動的に切り替える対象から抜け落ちていたという。

 システムは、「障害が必ず発生する」ことを前提に構築すべきだ。そのために、バックアップシステムや非常事態を想定した対応計画の策定が不可欠になっている。そこまで包含したのが、本来のシステム戦略である。

 東証は社外取締役4人で構成する調査委員会を設置した。そこでは、バックアップシステムがなぜ作動しなかったかだけでなく、システムが機能不全となった構造的な問題を検証し、公表すべきだ。

 一方、この事態を契機に浮上してきた議論がある。それは「東証と大阪証券取引所(現大阪取引所)を統合し、株式売買を東証に一本化したことの是非」だ。

 統合により大阪取引所は金融派生商品(デリバティブ)の取引に特化した。名古屋など国内の他の3証券取引所は東証と同じシステムを使っており、東証の障害で日本中の株式売買が停止した。株式売買を東証と旧大証との2本柱にしておけば、そうした事態は回避できたという考え方だ。

 この議論には、政府内で最近浮上している「東京以外の地域への国際金融センター誘致」という問題がからんでいるようにみえる。株式売買が集中する東証のバックアップとして、大阪など他の地域での国際金融…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。