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何でも言葉通りに受け取る「SE新入社員」伝え方の工夫

舟木彩乃・産業心理コンサルタント・カウンセラー
 
 

 吉田さん(仮名、女性、20代後半)が所属するIT企業のシステム開発部は、10人のSE(システムエンジニア)が働いています。面倒見がよく、顧客企業に対する対応もていねいな吉田さんは、今年の新入社員Aさん(男性、20代前半)の教育担当を任されました。

顧客への説明がうまくできない

 しかし早々に、吉田さんは頭を抱える日々となりました。「分からないことがあったらいつでも質問してくださいね」と言うと、Aさんは、吉田さんが商談の最中でも電話をかけてきたりしました。ある時は、ノックもせず応接室に入ってきて、中にいた役員から「君、失礼じゃないか!」と怒鳴られたこともありましたが、Aさんはきょとんとしていたそうです。

 吉田さんは、Aさんが休日や夜中でもお構いなしにメールやチャットで質問をしてくることにも困っていました。質問はマニアックな内容が多く、急を要する内容でもありませんでした。チャットのやりとりが何時間も続くこともあり、勤務時間中に質問してほしいと伝えると、「いつ質問してもよいということでしたよね?」と不思議そうに答えたそうです。

 Aさんは、SEを目指して工学系の有名大学を出ており、システム設計やプログラミングにはたけていて、設計図やリポートの優秀さを上司や顧客からほめられたこともあります。しかし、顧客への説明をAさん一人にやらせると、自分の興味のある箇所の説明が止まらないというクレームが吉田さんにまで来ることがありました。

 吉田さんはAさんの教育担当係に大きな負担を感じるようになっていました。威圧的にならないよう遠回しに注意をしていましたが、まったく通じていないことは明らかでした。

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産業心理コンサルタント・カウンセラー

 筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。一般企業の人事部などを経て、現在メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。金融庁職員のメンタルヘルス対策にも従事する。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタントなど保有。著書に「『首尾一貫感覚』で心を強くする」(小学館新書)。