
手塚さん(仮名、40歳男性)は、食品メーカーの工場でライン責任者をしていましたが、1年ほど前に交通事故に遭って約1カ月入院しました。退院後は治療とリハビリに励み、3カ月の休職を経て職場復帰をする前に、この会社の産業医を務める私と面談しました。
モノの置き忘れなど生活に支障
手塚さんは自転車を運転中、車と接触して横倒しとなり、頭を強く打ちました。脳挫傷と診断され、数日間は意識が混濁した状態でした。幸い、体に後遺症は残らず、短期間のリハビリをして退院し、自宅療養をしていました。
面談では「体は問題なく動くのですが、仕事をすることにちょっと自信をなくしています」と言いました。事故後、家族から「モノの置き忘れが多い」と指摘されるようになったからです。先日も通院したときに病院に財布を置き忘れ、病院から自宅に電話がかかってきたそうで「置き忘れた場所を思い出すのも難しいです」と話しました。
他にも、読書をしていたりテレビを見ていたりしてもすぐに集中力が途切れてしまったり、家族に言われたことを直後に忘れてしまったりするなど、生活に少し支障が出ているような状況でした。
私は、手塚さんが「高次脳機能障害」を発症していると考えました。高次脳機能障害とは、脳の損傷をきっかけとして、日常生活に支障をきたすようなさま…
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