
食品メーカーの工場でライン責任者を務めていた手塚さん(仮名、40歳男性)は、1年ほど前の交通事故で日常生活に支障をきたす「高次脳機能障害」を発症していると診断されました。職場復帰する際には、障害を持つ人を支援する「職場適応援助者(ジョブコーチ)制度」を利用することになりました(前回参照)。
ジョブコーチの支援を受け復帰
手塚さんは、ぼんやりとしてミスが多く集中力が維持できない「注意障害」と、モノの置き場所を忘れたり、新しい出来事が覚えられなかったりする「記憶障害」があると認定されました。私は産業医として、手塚さんと会社にジョブコーチの利用を提案しました。
ジョブコーチと会社、手塚さんの3者で検討した結果、職場には、工場のラインの一員である荷物の運搬係として復帰することになりました。試したところ、25分間作業するたびに5分休憩するというやり方であれば、就業時間を通して働けることがわかりました。業務に慣れていけば、徐々に集中する時間を延ばしていくことにしました。
復帰後、大きな問題は起こりませんでしたが、運ぶ荷物の数を間違えるなど小さなミスが重なりました。ジョブコーチは手塚さんにミスを防ぐための作業の進め方をアドバイスするとともに、上司や周囲の同僚にも、ミスをした手塚さんへの声のかけ方や仕事の…
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