藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

ラトビア首都リガ「バルト海の真珠」に隠された歴史

藻谷浩介・地域エコノミスト
  • 文字
  • 印刷
リガの市庁舎前広場を歩く花嫁。後ろは戦争前の姿に再建されたブラックヘッド会館。街は「バルト海の真珠」と称され美しい(写真は筆者撮影)
リガの市庁舎前広場を歩く花嫁。後ろは戦争前の姿に再建されたブラックヘッド会館。街は「バルト海の真珠」と称され美しい(写真は筆者撮影)

バルト3国編(3)

 団子三兄弟のように縦に並ぶバルト3国。上から2番目にあって、人口も2番目なのがラトビアだ。1人当たり国内総生産(GDP)は3国で一番小さいが、その首都リガは人口70万人と3国で最大で、3国で最大手の航空会社エア・バルティックのハブとなっている。「バルト海の真珠」とも呼ばれるこの美しい町の街頭で、この小国のアイデンティティーを探る。

バスで南下しながら実感した土地の豊かさ

 エストニアの首都タリンを出て2時間半。午前11時ごろに、バスは速度を落とさず国境を通過して、ラトビアに入った。筆者は最後尾の席に座って、後部の大きな窓に振り向いて景色を眺めていたのだが、ラトビアに入ったとたんに沿道に、エストニアで見てきたものよりはずっと実りの豊かそうな畑が増えたことに驚いた。

 日本で例えれば、エストニアの景色は北海道の稚内や紋別の郊外農地と似ているが、ラトビアに入るとそれが名寄や北見に似てくる。日照が少なくて酪農中心の地域から、夏の豊富な日照を生かした畑作地域に移動したわけだ。エストニアの人口130万人に対してラトビアの人口200万人というのも、この土地の生産力の差に起因しているだろう。

 農業条件の変わり目と国境が一致する光景には、既視感があった。欧州ピレネー山中のミニ国家アンドラから、バスでスペインのバルセロナに向かう途中、国境を越えたとたんに小麦畑が現れたのだ(「無国籍なスキーリゾートのアンドラは欧州の未来か」参照)。

「ハンザ同盟」の主要メンバー

 バルト語族に分類される古い欧州語を話すラトビア人やリトアニア人の先祖がこの地域に来たのは、紀元前2000年あたりら…

この記事は有料記事です。

残り1886文字(全文2580文字)

藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。