米国社会のリアル

大統領選でトランプ氏に審判を下す「郊外の女性たち」

樋口博子・ロス在住コラムニスト
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トランプ米大統領=2020年10月13日、AP
トランプ米大統領=2020年10月13日、AP

 「郊外の女性のみなさん、どうか私を好きになってください(Suburban women,will you please like me?)」 。10月13日、コロナ感染から復帰したトランプ大統領が接戦州ペンシルベニアの集会で、こう懇願しました。

 大統領選まで2週間を切り、トランプ氏が「女性票」の取り込みに苦戦しています。世論調査による女性の支持率は、バイデン氏の59%に対し、トランプ氏は36%と23ポイント下回り、郊外に限れば28ポイントの差があります(ワシントンポスト、10月10日発表)。

 しかしバイデン陣営には、世論調査でいくら優勢と出ても緊迫感が漂い続けています。2016年の大統領選では、世論調査で選挙当日まで優勢だったクリントン氏を、トランプ氏が接戦州の勝利で追い越し、当選を果たしたからです。

見えにくかった郊外女性たちの声

 16年は「ブルーカラーの白人男性」らがトランプ氏を勝たせたと言われます。サイレント・マジョリティー(物言わぬ大衆)と言い換えてもよいでしょう。彼らの動向を過小評価したことで、多くのメディアが「トランプ勝利」を予測できませんでした。では今回はどの層が選挙戦の勝敗を左右するのか。私は「郊外の女性たち」だと考えています。

 米国の「郊外」は、都市部(民主党優勢)や農村部(共和党優勢)と比べ、無党派層も多く住む場所です。家族世帯が多いのも特徴で、接戦区では投票行動のわずかな変化で勝敗が逆転するため、両陣営は莫大な選挙資金を投じます。その中で私が「女性」に注目するのには理由があります。

 今回の選挙戦で彼女らの声は、とても見えにくくなっていました。コロナ禍で選挙集会などが相次いで中止され、選挙運動の主戦場がインターネット上に移行したことが一因でしょう。

 彼女らの多くは、SNSなどで政治的意見を述べることが日常的ではなく、保健行政のガイドラインを順守し、自宅…

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樋口博子

ロス在住コラムニスト

 兵庫県生まれ。ロンドン大修士(開発学)、東大博士(国際貢献)。専攻は「人間の安全保障」。2008年、結婚を期にロサンゼルスに移住。渡米前はシンクタンク、国際協力銀行、外務省、国際NGOで開発途上国支援に取り組んだ。米国で2019年に独立。地元コミュニティーを地域や日米でつなぐ活動をしている。カリフォルニア州議会下院議員アル・ムラツチ氏(民主党)は夫。