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コロナ禍の「通勤手当廃止」で老後の年金が減る不思議

渡辺精一・経済プレミア編集部
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 新型コロナウイルス感染防止のため在宅勤務が定着するなか、企業が「通勤手当」を廃止する動きが進んでいる。出社時の通勤費用は実費精算に変えるため本人の負担はないが、実は思わぬ影響がある。将来の年金額が減る可能性があるのだ。

通勤手当「二つの誤解」

 通勤手当は、通勤にかかる費用を補助するため、会社が支給する。働く人にとってはおなじみだが、意外に誤解されている二つの点がある。まず、それを確認しよう。

 一つ目は、通勤費用は本人が負担するのが原則で、会社が通勤手当を支給することは法律で義務づけられてはいないことだ。「職場に行くための費用だから支払うのが当然」と思う人もいるだろうが、そうではない。

 通勤手当を支給するか▽支給するなら全額か一部か▽上限は設けるか――などは会社が任意で決める。そうして就業規則などに通勤手当の支給を定めると、それが「会社と従業員との約束」となって、会社にはその約束を守る義務が生じるわけだ。

 厚生労働省「就労条件総合調査」によると、通勤手当がある会社は2015年で全体の92%で、支給額は平均で月1万1462円。大企業では「通勤定期券代の支給」とするのが一般的だ。

 法的義務がないのに、通勤手当が普及しているのは歴史的な経緯がある。戦後、大都市は住宅難で遠距離通勤が増え、従業員の通勤費用の負担が重くなったため、支援策として導入が進んだ。さらに高度成長期になると、人手不足となったため、人集めのための福利厚生策として定着した。

 二つ目は、通勤手当は、営業外回りなど業務上の移動のための「交通費」とは別だということだ。通勤手当を「交通費」と呼ぶこともあるため、両者は混同され…

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渡辺精一

経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。