職場のストレス・マネジメント術

「役員が認知症?」秘書一人に背負わせた会社の問題点

舟木彩乃・産業心理コンサルタント・カウンセラー
  • 文字
  • 印刷
 
 

 岡田さん(仮名、女性40代前半)は小売業の会社で経営管理室(10人)に勤務し、役員付の秘書をしています。

 彼女が担当するA役員(男性60代前半)は仕事熱心で誰よりも早く出社し、寡黙な性格ながら、支えてくれるスタッフに率直に感謝の言葉を表す人で、岡田さんはA役員を尊敬していたそうです。

会議の途中で突然に部屋を出ていく

 しかし、数カ月前から、彼女はA役員の異変を感じるようになりました。会議の途中で突然部屋から出て行ったり、社員があいさつすると「うるさい!」と横柄な態度で言ったりすることがあったからです。1日に何度も甘いお菓子を買いに行くよう頼まれることがあったので、健康を心配して「体に悪いですよ」と言うと、急に机をたたいて怒り出すこともありました。

 周囲は「年がいって偉くなるとわがままになるものだ」くらいの認識でした。無理な要求にも岡田さんが一人で対応する形になってしまい、上司の室長や同僚は、あまり問題視していませんでした。

 しかし、岡田さんはかなり精神的に疲弊していたようで、筆者は岡田さんから、A役員の状態や周囲の理解不足について相談を受けました。筆者は、A役員への対応で具体的に困っていることを書き出してもらい、それを室長と共有してもらうことにしました。

病院で診てもらうと…

 そんなとき、A役員が視察に行った店舗から本社に報告が入りました。A役員の顔を知らない店員が、大量の商品を持ち帰ろうとする人を見つけ、「万引き犯」だと思ってスタッフルームに同行させたところ、A役員だったことが判明したというのです。

 翌日、室長がA役員から事情を聴き出そうとすると、悪びれる様子もなく「な…

この記事は有料記事です。

残り820文字(全文1516文字)

舟木彩乃

産業心理コンサルタント・カウンセラー

 筑波大学大学院博士課程修了(ヒューマン・ケア科学博士)。カウンセラーとして8000人以上、コンサルタントとして100社を超える企業の相談に対応。一般企業の人事部などを経て、現在メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。国家資格として公認心理師、精神保健福祉士、第1種衛生管理者、キャリアコンサルタントなど保有。著書に「『首尾一貫感覚』で心を強くする」(小学館新書)。