
初のEV「MX-30」の戦略(1)
マツダが10月8日、新型SUV(スポーツタイプ多目的車)「MX-30」を発売した。マツダは昨秋の東京モーターショーで、MX-30を同社初の量産電気自動車(EV)として公開したが、今回国内で発売したのはエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド(HV)モデルだ。どうしてマツダはEVを発売しなかったのだろう。
マツダは昨秋の東京モーターショーでMX-30について「2020年後半に欧州市場で発売する。日本への導入時期は未定だが、いずれ販売する」と発表していた。
欧州ではEVとして発売
公約通りマツダは今年9月、欧州でEVのMX-30を発売した。EV専用と見られていた同車だが、日本ではHVを先行させ、「EVは21年1月に発売する」という。
しかも、日本でEVモデルはリース販売になるという。リースは地方自治体や法人の契約が中心だ。一般のユーザーも利用可能だが、実質的な販売台数は限られるだろう。
欧州でマツダはMX-30をリース販売ではなく、一般ユーザーに直接販売し、出足は好調という。それなのに、なぜ日本ではHV主体なのか。
マツダの丸本明社長は「欧州の規制に対応するため、欧州に必要な台数を供給することが、このクルマのファーストプライオリティー(第一の使命)だ」と説明する。
厳しいEUの環境規制
欧州の規制とは、欧州連合(EU)が21年に強化する排ガス・燃費規制を指す。「企業別平均燃費基準(CAFE)方式」と呼ばれ、EU内で販売するクルマの二酸化炭素(CO2)排出量に基準を設け、満たせないメーカーには罰金を科すというものだ。
英調査会社PAコン…
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川口雅浩
毎日新聞経済プレミア編集長
1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部