ニッポン金融ウラの裏

激突する銀行と証券「ファイアウオール」の対立点

浪川攻・金融ジャーナリスト
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建ち並ぶ銀行の看板=東京都江東区で2015年10月27日、中村琢磨撮影
建ち並ぶ銀行の看板=東京都江東区で2015年10月27日、中村琢磨撮影

 銀行と証券の業務分野を分ける「ファイアウオール」(隔壁)の規制のあり方に関する議論が、金融業界で激しさを増してきた。銀行業界が規制緩和を主張する一方で、証券業界には規制維持を求める声が強い。議論は金融庁が設置している諮問機関、金融審議会の「市場制度ワーキンググループ」で続いている。

 今の議論は、同一グループの銀行と証券会社で、顧客情報の共有を認めるか否かが焦点となっている。「情報共有を認めると、利益相反などの問題につながりやすい。それを防ぐためには、銀行と証券との間で情報を遮断する規制を続ける必要がある」というのが証券業界の議論だ。

国際銀行協会の主張

 10月26日に開かれたワーキンググループの会合で、外資系銀行などで作る国際銀行協会が、規制撤廃を主張する論拠として一つの事例を紹介した。

 同一グループの証券会社と銀行が、顧客(企業)に別々の提案をした。証券会社は増資を提案し、銀行の提案は融資の回収だった。客の情報は共有しておらず、それぞれが顧客の利益になると考えた提案だった。だが、結果として、増資で得た資金で銀行が融資を回収する形になり、顧客と銀行・証券との利益相反の関係ができてしまったというのだ。

 国際銀行協会は、「顧客情報を共有していなくても、結果として利益相反と受け取れられる行為は起こりうる」と説明した。そして、「弊害をもたらすのは『不適切な情報共有』であり、情報を共有すること自体は弊害を生まない」と主張した。

 グループ内で顧客情報を素早く共有すれば、むしろ利益相反状態を早期に見つけることができ、適切な管理が可能になると強調した。情報共有禁止の規制が日本の国際金融セン…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。