MaaSが創る都市と地方の近未来

コロナ下で花開くスマホ型交通・観光サービスの可能性

森田創・東急MaaS戦略課長、ノンフィクション作家
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スマートフォンに入ったデジタルチケットを確認する駅係員
スマートフォンに入ったデジタルチケットを確認する駅係員

 静岡県の伊豆半島を中心とした日本初の観光型MaaS(マース)「Izuko(イズコ)」は11月16日、最後の実証実験(フェーズ3)の幕が切って落とされる。来年3月末まで実施し、市場のニーズや運営面に問題がないことが確認されれば、来年度以降の事業化が見えてくる。総責任者である私としては、いやが応でも、肩に力が入る日々が続いている。その肩こりたるや、伊豆の温泉をもってしても容易に癒やせぬほどである。

スマホで予約と決済「自在に旅を」

 MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)とは、あらゆる交通手段がスマートフォンで予約・決済できるサービスで、産声を上げたばかりの産業分野だ。世界ではこの5年、日本では昨年から取り組みが始まった。なかでも観光型MaaSは交通手段に加え、観光施設の入場料なども決済対象にすることで、「スマホさえあれば自在に旅ができる」という手軽さを利用者に提供するものだ。

 加えて、利用者の動向といったデータを収集・分析することで、地方観光地の各産業の省力化に役立てる狙いがある。少子高齢化の波にさらされる観光地としては、これまでより少ない人数で回していきたいところだ。季節や曜日、時間帯によって変化する利用者数を精緻に予測できれば、効率的な人員配置や配車が可能になる。

非接触・混雑緩和「新しい生活様式」に合致

 実はこのMaaS、いわゆる「新しい生活様式」の先駆けともいえるサービスなのだ。スマホの決済画面を見せるだけで、電車やバス、観光施設を利用でき、「対人接触を避けながら周遊したい」という新型コロナウイルス下の観光客のニーズに合致している。収集したデータをもとに繁閑に応…

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森田創

東急MaaS戦略課長、ノンフィクション作家

 1974年神奈川県生まれ。99年、東京急行電鉄株式会社入社。ミュージカル劇場「東急シアターオーブ」の開業責任者、広報課長を経て、2018年から現職。日本初の観光型MaaS(次世代移動サービス)「Izuko」を伊豆半島で立ち上げた経緯を記した「MaaS戦記」を20年夏に刊行したほか、「洲崎球場のポール際」(第25回ミズノスポーツライター賞最優秀賞)「紀元2600年のテレビドラマ」の著作も。