産業医の現場カルテ

19歳新入社員の「持病」に対応した職場の“変化”

佐藤乃理子・産業医・労働衛生コンサルタント
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 沼田さん(仮名、19歳男性)は、今年の春から物流会社の倉庫で働いている新入社員です。この会社の産業医を務める私は、沼田さんの入社時の健康診断で問診票の既往歴に「てんかん」と書いてあったことが気になり、面談を申し入れました。

発作は出ていないが…

 てんかんは子供が発症しやすく、急にけいれん発作を起こしたり、一時的に意識を失ったりする疾患です。抗てんかん薬で症状を抑えることができますが、発作がいつ起こるかわかりません。

 沼田さんは倉庫で荷物を運んだり、整理したりする業務を担当しています。この会社の人事担当者を通じて私が沼田さんと面談をしたのは、入社から3カ月ほどたったころでした。

 症状について詳しく聞くと、沼田さんは小学生のころにてんかんと診断され、薬物治療を続けていました。治療を始めてから大きな発作が出たことはなく、主治医から「発作や意識の消失はいつ起きるかわからないので、1人で行動するときは気をつけるように」と指導されていました。そこで沼田さんの同意を得た上で、主治医から就業に関する意見を聞くことにしました。

 まず私から、沼田さんの業務に関して、重量物を取り扱うことがあり、今後は深夜勤務をする可能性があることを伝えました。

 主治医からは、発作は5年以上起こっていない▽抗てんかん薬を続ける必…

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佐藤乃理子

産業医・労働衛生コンサルタント

2002年、藤田保健衛生大学医学部卒業。泌尿器科医として病院に勤務しながら、がん治療薬の基礎研究にあたった。10年に厚生労働省健康局へ出向して臓器移植関連の政策に従事し、13年に北里大学医学部に所属し、同大学病院の医療マネジメント、経営企画に参画。15年に日本医師会認定産業医となり、複数の企業の嘱託産業医を務めてきた。20年4月に労働衛生コンサルタントを取得し、幅広く働く人の健康や職場環境の管理に関する相談を受ける。また、東京都檜原村で労働環境やライフスタイルのあり方を提案する「檜原ライフスタイルラボ」の共同代表を務める。