経済プレミア・トピックス

東電福島原発の汚染処理水「薄めて流せば安全」本当か

川口雅浩・毎日新聞経済プレミア編集長
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東京電力福島第1原発の敷地内に立ち並ぶ汚染処理水が入ったタンク=2020年8月21日、本社ヘリから
東京電力福島第1原発の敷地内に立ち並ぶ汚染処理水が入ったタンク=2020年8月21日、本社ヘリから

どうする福島の汚染処理水(1)

 東京電力福島第1原発のタンクにたまり続ける汚染処理水が議論を呼んでいる。政府は2020年10月末にも関係閣僚会議を開き、汚染処理水の海洋放出を決める方針だったが、地元の漁業団体の反発などで先送りとなった。

 汚染処理水には放射性物質のトリチウムなどが含まれている。政府は国内外の原発関連施設がこれまでもトリチウムを排出しており、福島の汚染処理水については国の放出基準を下回る濃度に薄めて放出するため、生態系への影響はない――などと主張している。

 これに対し、原発を設計してきた技術者OBや学者らの専門家グループ「原子力市民委員会」(座長・大島堅一龍谷大教授)や超党派の国会議員らが「トリチウムの人体への有害性には諸説あり、薄めて流せば安全と言えるのか」などと反論。放出する放射性物質の濃度だけでなく、総量を問題とし、政府と東電に海洋放出の再考を求めている。

取り除けないトリチウム

 福島第1原発では溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)を水で冷やす作業が今も続いている。さらに敷地内から流れ出る大量の地下水が建屋内に入り込み、燃料デブリに触れることで、大量の汚染水が発生している。

 このため東電は、汚染水を多核種除去設備「ALPS(アルプス)」に通してこし取り、放射性物質の濃度を下げ、汚染処理水として敷地内のタンクに保管している。アルプスは62種類の放射性物質を国の基準値以下に除去できるが、トリチウムは取り除けないという。

 増え続ける汚染処理水で敷地内のタンクは満杯に近づき、東電は残った空き地に増設しても、22年には限界になると主張。「これ以上、タンクを増設すれば燃料デブリ…

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川口雅浩

毎日新聞経済プレミア編集長

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部