
民意の審判が接戦で下され、節目の11月となった。
米大統領選挙でバイデン前副大統領の当選が確実になった。国内では「大阪都構想」が否決され、維新勢力が敗北を喫した。いずれも「コロナ禍」が大きなファクターとして働いた。
首相には追い風か
菅義偉首相は内心、胸をなで下ろしているかもしれない。
大統領選後初の電話協議でバイデン氏は、尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用範囲だと伝えた。従来見解に沿った発言だが、国内右派に流布する「中国寄りのバイデン氏」というイメージをある程度は、緩和できた。
逆にトランプ政権が継続した場合、米中関係が極度に緊張し、日本が「踏み絵」を迫られるリスクが高まる懸念があった。菅内閣は2030年までに年間訪日外国人(インバウンド)6000万人達成という目標を掲げる。インバウンド効果とIR(統合型リゾート施設)は成長戦略の柱であり、中国との良好な関係抜きには成立しない。バイデン氏の勝利は、決してマイナスではなかった。
大統領選を巡り、もう一つ注目されるのが、菅首相と安倍晋三前首相の力学の変化である。
「敵基地攻撃能力」の保有検討を巡り安倍氏が首相当時に「今年末まで」に結論を得るとした談話について、菅首相は閣議決定を経ていないことを理由に政府見解としない方針を明確にした。このことは「首相は安倍氏と距離を取ろうとしている」との観測を広げた。
一方、安倍氏は復調をアピールし、活動を活発化している。自民党の「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」会長にも就任し、党内では「再々登板説」すら取り沙汰され始めた。
仮にトランプ氏が当選すれば、特殊な信頼関係を持つ安倍氏の存…
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