
コートがいらないほどのポカポカ陽気にひかれ、東京都内の神社に知人の女性とランチに出かけた。境内のベンチにすわってお弁当を食べていると、目の前に紺色のスーツもしくはワンピースに、黒のバッグと靴の女性たちが結集し始めた。
黄金に輝くイチョウとのコントラストで、より目立つ。
年の頃は、だいたい30代前半だろうか、みんなほっそりしている。「おはらい?」といぶかっているうち、午後1時前、女性たちは列を作り始めた。
行列の先頭は?
行列が動き始めたころ、意を決して先頭を見に行った。そこは有名私立一貫校の付属幼稚園の表札がかかった門。幼稚園のお迎えだった。
そういえば朝も、同じような格好の女性と制服姿の幼い女の子が一緒に歩いているのを見かける。
ざっと見て、30~40人ぐらいの行列に男性は2人。
「やっぱりお迎えはママの役割?」「フルタイムで働くママのお迎えは難しい?」「この時刻にお迎えができる生活はうらやましい?」などと、知人の女性と盛りあがった。
これまで保育所探しや保育所のお迎えが大変というのは数限りなく見聞きしてきたが、幼稚園のそれは未知の世界だった。
お受験の世界とは
幼稚園受験の世界、一体どのようなものなのか。ハウ・ツー本を読んでみた。
まずは「有名幼稚園に合格させるために なんでもわかる幼稚園受験の本 2021年度版」(桐杏学園)。「はじめに」で「幼稚園受験は、親と子の協同の闘いです」と断言。
行列を目撃した幼稚園の面接テスト(2年保育)の「母親へ」の質問には「お仕事についてお聞かせください。お仕事の間、お子様はどうしていますか」。やはりフルタイムの仕事は想定されていないようだ。「子どもへ」の質問で…
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山田道子
元サンデー毎日編集長
1961年東京都生まれ。85年毎日新聞社入社。社会部、政治部、川崎支局長などを経て、2008年に総合週刊誌では日本で最も歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長、紙面審査委員。19年9月退社。