いま地球環境を考える

バイデン氏が復帰する「パリ協定」の意外な仕組み

小西雅子・WWF(世界自然保護基金)ジャパン専門ディレクター
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バイデン氏の当選が確実となり、喜ぶ支持者たち=米国東部ペンシルベニア州で
バイデン氏の当選が確実となり、喜ぶ支持者たち=米国東部ペンシルベニア州で

 世界が固唾(かたず)をのんで見守った米大統領選挙。バイデン氏は2021年1月20日の次期大統領就任当日に、地球温暖化防止の国際条約である「パリ協定」へ復帰すると宣言しました。

 パリ協定とは、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて2度(できれば1.5度)に抑えることを長期目標に掲げた国際条約です。そのために今世紀後半に世界の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを掲げる、非常に野心的な条約です。

 今のトランプ大統領は、2017年に就任してすぐにパリ協定からの離脱を宣言し、手続きに従って米国は3年後の今年11月4日、正式にパリ協定から離脱してしまいました。皮肉にもこの日は、米大統領選の翌日でした。

意外に簡単な復帰手続き

 いったん抜けたパリ協定へどうやって戻れるかというと、手続き的には次期大統領となるバイデン氏が大統領令にサインするだけです。米国議会に諮る必要はないので、大きな支障はありません。

 後はパリ協定の規定に従い、30日後に米国は再びパリ協定の締約国となることになります。

 なぜこんな簡単な手続きで戻れるのか、不思議に思うかもしれません。実はその裏には過去20年以上にわたる複雑な背景があるのです。

 1997年の京都議定書から始まり、2015年のパリ協定に至るまで、米国はその時の政権次第で地球温暖化への対応が二転三転してきました。

 97年に京都で開いた地球温暖化対策の国連会議(COP3)で、当時のクリントン大統領率いる民主党政権は、ゴア副大統領を派遣して、世界で初めて法的拘束力を持つ京都議定書の成立に尽力しました。

 ところが「中国を含む発展途上国に削減義務がないことは米経…

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小西雅子

WWF(世界自然保護基金)ジャパン専門ディレクター

 神戸市生まれ。米ハーバード大修士課程修了、法政大博士(公共政策学)。中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005年に国際NGOのWWFジャパンへ。地球温暖化防止の国際交渉などで施策提言を行う。15年から昭和女子大特命教授を兼務する。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会街づくり・持続可能性委員会委員、環境省中央環境審議会委員なども務めている。