ニッポン金融ウラの裏

観光客誘致と同じ発想?菅政権の「国際金融都市構想」

浪川攻・金融ジャーナリスト
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首相官邸に入る菅義偉首相=東京都千代田区で2020年11月24日、竹内幹撮影
首相官邸に入る菅義偉首相=東京都千代田区で2020年11月24日、竹内幹撮影

 菅政権が掲げた「国際金融都市構想」の議論が続いている。日本に世界屈指の国際金融拠点を設立しようというものだ。わが国にとって国際金融都市や国際金融センター化といった構想は古くて新しいテーマでもある。議論の現状を紹介する。

消えた「円の国際化」の議論

 わが国では過去にも幾度か、国際金融センターの実現に向けた論議が行われてきた。その多くは「円の国際化」と絡んでいた。

 「円の国際化」は、円をドルに次ぐ国際通貨に成長させ、円建ての貿易取引や金融取引を増やしいく考え方だ。それを目的として、東京を国際金融センターに進化させていく構想だった。だが、日本経済が停滞するなかで、国際金融センター化や「円の国際化」は遠のいてきた。

 一方、今回の議論には「円の国際化」という観点はほとんど見いだせない。

 国際金融都市構想は、金融庁が金融審議会のもとに設置したワーキンググループを中核として議論が交わされている。そこでは、香港、シンガポールが国際金融センターとなってきたなかで、日本がこれ以上の後れをとらずに「アジアにおける国際金融拠点」の役割をどう果たすか、という論点が大きく取り上げられている。

 日本国内へのドル建ての投資を活発化させたいという話や、国内から海外への投資を増やそうという論点もないわけではない。だがそれよりも「より多くの外資系金融会社に支店や現地法人を構えて事業展開してもらいたい」「そのための環境をとにかく整えよう」という考え方がベースになっているようだ。外国人観光客の誘致・拡大と同じ発想であり、まるでインバウンドの「金融版」に見える。

シンガポールのきめ細かな誘致策

 こうした議論の現状を…

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浪川攻

金融ジャーナリスト

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカーを経て、金融専門誌、証券業界紙、月刊誌で記者として活躍。東洋経済新報社の契約記者を経て、2016年4月、フリーに。「金融自壊」(東洋経済新報社)など著書多数。