藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

「インド西岸ゴア」ザビエルが眠る町で感じた悠久の時

藻谷浩介・地域エコノミスト
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ポルトガルの植民地だったゴア地区の中心パナジの街並みは独特の色彩を放っている(写真は筆者撮影)
ポルトガルの植民地だったゴア地区の中心パナジの街並みは独特の色彩を放っている(写真は筆者撮影)

インド・ムンバイとゴア編(4)

 56歳の筆者は、手塚治虫原作の特撮テレビ番組「マグマ大使」を、リアルタイムで見た世代のどん尻だ。敵役の宇宙人の名前はゴア。肩から角が生えた怖い姿は、幼い筆者の脳裏に「ゴア=悪魔」という印象を深く刻んだ。しかしインドのゴア州は、ポルトガルによって築かれ、インドにおいては例外的にクリスチャンの多いエリアだ。日本にキリスト教を伝えた聖フランシスコ・ザビエルの遺骸もここにある。「インドにあってインドでない」と言われるこの州の今は?

ムンバイから空路で1時間少々

 今思えば新型コロナウイスルの脅威が翌月に迫っていた2019年12月。インドのムンバイへの弾丸旅行に出た筆者は、ムンバイ観光もそこそこにゴアに足を延ばした。

 マカオ、マラッカ、東ティモール、アフリカ東南岸のモザンビーク島と、リスボンから長崎に至る経路上に点々と残る旧ポルトガル植民地を見て歩いて来た者として、ポルトガルのアジアにおける最大拠点だったこの地を、訪れて見ずにはいられなかったのである。

 インド亜大陸全体の地図では隣同士に見えるゴアとムンバイだが、実際の両地は南北に550キロ離れている。ちょうど東京-大阪間と同じ距離だが、鉄道でもバスでも12時間程度かかってしまう。ちなみに日本の東京-大阪なら、JRの在来線の各駅停車を乗り継いでも8時間台だ。しかし便がたくさんある空路では1時間少々で、インドのLCC(格安航空会社)インディゴ航空で往復2万円と手ごろである。

 移動当日は月曜日。便はホテルの26キロ北のムンバイ空港を午前11時20分発だが、ホテルのスタッフの忠告に従って午前8時にタクシーに乗…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。