
どうする福島の汚染処理水(3)
東京電力福島第1原発のタンクにたまり続ける汚染処理水を食い止める方法はないのか。
原子力関連メーカーの元技術者で、政府の旧原子力安全委員会(現在の原子力規制委員会)の技術参与を務めた滝谷紘一さんは、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)を水で冷やす現在の方法を改め、空気と窒素ガスを循環させて冷やす「空冷方式」を提唱している。
福島第1原発は燃料デブリを水で冷やす作業が今も続き、敷地内から流れ出る大量の地下水が原子炉建屋内に入り込むことで大量の汚染水が発生している。
滝谷さんは原発プラントの元設計者ら専門家で組織する市民団体「原子力市民委員会」(座長=大島堅一・龍谷大教授)のメンバーだ。
滝谷さんは「水の代わりに空気や窒素ガスで冷却することができれば、汚染水の複雑な問題を解消することができる」と主張する。現在の原子炉建屋の外側に鉄筋コンクリート製の遮蔽(しゃへい)を作り、密閉することで、汚染した空気や窒素ガスが外部に漏れないようにする。
水に比べ気体の冷却効果は低いが、滝谷さんは政府系研究機関や米スリーマイル原発事故の研究報告などを基に解析。その結果、「空冷方式で安全に冷却できる見通しが得られた」という。
東電が注水停止の試験
政府と東電も汚染水の発生を抑えるため、燃料デブリへの注水をやめ、空気による冷却ができないか、具体的な検討を重ねている。最終的には…
この記事は有料記事です。
残り561文字(全文1157文字)
川口雅浩
毎日新聞経済プレミア編集長
1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部