藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」

旧ポルトガル植民地「インド・ゴア」地元料理の深い味

藻谷浩介・地域エコノミスト
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前階段が特徴的なパナジ教会(写真は筆者撮影)
前階段が特徴的なパナジ教会(写真は筆者撮影)

インド・ムンバイとゴア編(5)

 60年前まで、500年間ポルトガルの支配下にあったインドのゴア州。フランシスコ・ザビエルの遺骸の眠るオールド・ゴア地区を散策した筆者は、広場で頻繁に来るミニバスをつかまえ、20分ほどで州都パナジ市街のバスターミナルに戻った。午後5時前でまだ1時間は明るいので、開催中だと聞いた現代アート展覧会を見に行く。

芸術祭で見つけた藍染めの魅力

 行事の名前は「セレンディピティ・アートフェスティバル」。訳せば「思わぬ出会いの芸術祭」という感じだろうか。パナジ市街の中にあるいくつかの歴史的建造物が会場となっている。その一つに出向くと、こうした国際芸術祭にはつきものの若いボランティアスタッフが詰めていて、明るい空気感があった。

 いろいろある作品の中で、藍染めを使った展示が目を引く。藍は英語では「indigo(インディゴ)」。訳せば「インド伝来」である。ちなみに日本で「印伝」(同じくインド伝来の意味)といえば、鹿皮に漆を施した甲州名産の工芸品だが、インド藍の歴史は文明の最初のころにさかのぼるもので、紀元前2000年ころには、インド産のものがメソポタミアやエジプトに運ばれていたという。

 藍の原料はマメ科の多年草だそうだが、日本ではインドシナ原産の蓼(たで)の一種を使う。インド産でも日本産でも抽出される色素自体は同じなので、風合いは似ている。しかし色素の含有量ならやはりインド産らしい。

 芸術祭を見ているうちに日が沈んできた。ホテル近くの辻(つじ)にサモサの屋台が出ている。サモサは「三角形のインド風カレーパンというかカレー風味の餃子(ギョーザ)」というのは失礼な表現…

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藻谷浩介

地域エコノミスト

1964年山口県生まれ。平成大合併前の約3200市町村のすべて、海外114カ国を私費で訪問し、地域特性を多面的に把握する。2000年ごろから地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行う。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」ほか多数。国内の鉄道(鉄軌道)全線を完乗した鉄道マニアでもある。