海外特派員リポート

中国「アリペイ」上場中止“習氏が激怒”の真相とは

小倉祥徳・毎日新聞中国総局(北京)特派員
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中国のアリババ集団の本社=中国浙江省杭州市で2019年11月11日、工藤哲撮影
中国のアリババ集団の本社=中国浙江省杭州市で2019年11月11日、工藤哲撮影

 中国電子商取引最大手アリババ集団の子会社で、電子決済サービス「アリペイ」を運営する「アント・グループ」の上場が急きょ中止になり、波紋を広げている。アリババ創業者で中国最大の資産家でもある馬雲(ジャック・マー)氏の当局批判が引き金になったとされるが、真相は別のようだ。

 アントは11月5日に上海と香港の両証券取引所に新規上場し、史上最高となる約3兆6000億円を調達する予定だった。時価総額は30兆円超と中国の大手国営銀行を上回り、世界の主要金融グループでもトップクラスとなることが見込まれていた。

 ところが、直前の2日に金融当局が馬氏やアント幹部を呼び出して指導したことで、上場は急きょ中止になった。アント株の購入には投資家が殺到し、新株の追加発行も見込まれていたため、市場関係者に大きな衝撃を与えた。

突然の介入の真相は

 当局の突然の介入の原因とされたのが、10月24日、上海市内で開かれたセミナーでの馬氏の講演内容だ。「中国の問題は金融システムのリスクではなく、金融システムがないことだ」「良いイノベーションは監督を恐れない」などと体制批判を展開した。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、この講演の報告書を読んだ習近平国家主席が激怒し、当局にアントの上場を調査し、中止させるよう命じたと伝えた。

 だが、金融当局の事情に詳しい複数の金融関係者は「それまでも当局はアントの消費者金融事業への懸念を強めていたが、なかなか手をつけられずにいた」と口をそろえる。

 アリペイの支払いは通常、銀行口座に…

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小倉祥徳

毎日新聞中国総局(北京)特派員

東京都生まれ。2001年入社。秋田支局を経て06年から東京経済部で財務省、内閣府、経済産業省、国土交通省、日銀、証券、エネルギー業界などを担当。17~19年には中部本社でトヨタ自動車などを取材した。東京経済部、外信部を経て20年10月から経済担当の中国総局(北京)特派員。